ハナダジム崩壊中

 「ハナダシティ」と書かれた看板を見て、一気に緊張がとけて肩の力が抜けた。
 お月見山では迷子になるわよくわからない連中で絡まれるわで散々だった。
 今日はゆっくりポケモンセンターで休んで、ジム戦は明日でも良いかな。フシギダネなら相性もいいだろうし、体力回復したらそのままハナダジムにGOだ。

「……ん?」

 ポケモンセンターの横にあるのはハナダジムの筈だけど、なにやら人が集まってざわざわと騒がしい。
 何かあったのかな、と僕も近づいてみれば、人混みの中に見慣れた後ろ姿。

「グリーン、何してんの?」
「あ? なんだよレッド、今更来たのかよ」
「……ジムに何かあるの?」

 馬鹿にするように笑うグリーンにちょっとむっとして、グリーンを押し退けて人混みに紛れる。
 そこにあるのは「ご自由にお持ちください」と書かれた紙を添えたかごに、大量のブルーバッジ。

「……は?」
「な、意味わかんねぇだろ。俺も今日ジム戦しようと思って来たらこれだったんだよ」
「グリーンだってハナダに着いたの今日なんじゃん」
「うるせぇ! 俺はただストレート勝ちする為にレベル上げをしててだなぁ――」
「なぁ知ってるか? ジムリーダーのカスミが飛び出してった理由」
「!」

 後ろの方で話す声を聞いて、思わず二人して振り返る。
 気になった僕も聞き耳を立てるけど、ちょっと待てグリーン。そんなあからさまに近づいたらバレるってか不審がられるだろうが!

「なんかさぁ、すげぇ強いガキのトレーナーに負けたんだってさ」
「へぇ、そんで修行の旅に出たの? でもちょっと無責任じゃね?」
「いや、それが去り際にすげぇ罵倒されて、怒ると思いきや目ハートにして追いかけていっちゃったとか」
「はぁ? なんだそ――」
「そのトレーナーの名前は!?」
「なっ?!」

 僕がまさかな、と思いながら固まっている間に、グリーンが勝手に話していた二人に身を乗り出してそう聞いた。
 グリーンの頭をぽかんと叩いて「すいません」と謝れば、男の人は若干引き気味ながらも「あぁ、」と返事をした。あ、なんか手にグリーンの髪のワックスついてベタベタする。

「俺は知らないけど……ジム内の石像のとこ見れば書いてあるんじゃねぇの? 最後の挑戦者ソイツだし」
「ありがとう!」

 今度は僕とグリーン二人で一目散にジムの扉を開けて中に入った。
 中にいたジムトレーナーたちがぽかーんとしてたけど、何も知らない子供が間違って入って来ちゃったことにしといて貰おう。

「あった! ハナダジム認定トレーナ、ファイア……」
「…………」

 思わずグリーンと顔を見合わせた。

「こりゃタマムシ辺りも危ねぇかもな」
「ヤマブキもね……」

 とりあえず無料配布中のブルーバッジは有り難く貰っておくことにしよう。



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