「…でさ、ファイアも最近ますます強くなってるんだ!」
「へえー。」
「そろそろ僕も隠居かな?たっはー!ねえ、グリーン聞いてる?」
「へーへー、聞いてるよ。」

右から左に聞いていますとも。
コイツはさっきからファイアの話しかしていない。何がどーな「たっはー」だ。最強のトレーナーと謳われるくせしてすっかり顔がデレッデレに緩んでいる。そりゃあ、弟が可愛いのは解る。俺にもツネカズという弟がいるから、気持ちは物凄く解る!
だが久し振りに下山して会えたと言うのに、これは無いだろう。レッドの阿呆は俺の気も知らずにまだファイアの話。しかも何故俺のイーブイを抱いているおいコラ。イーブイも何故抵抗しない、あっ!何喉鳴らしてんだ!
俺はじとりとレッドを見るが、当のレッドはイーブイの毛に顔を埋めていて表情が読めない。しかし兄馬鹿から、不意に声のトーンが下がる。

「…ファイアはさ、僕に勝ちたいんだよね。ファイア、毎回僕と勘違いされてるみたいだから。」
「…ふーん。」

そりゃ初耳だ。あの生意気小僧、そんな事があったのか。だがそれはそれ、これはこれである。何だってお前はファイアの事ばかり。
俺は椅子から降りてレッドが座っているベットまで距離を縮める。イーブイに顔を埋めているレッドは気付かない。足音を消し、そっと近づく。
コイツはバトルかファイアの事となると集中し過ぎて周囲に対しての意識が疎かになる。そんな癖をコイツはまだ直していない。ああレッドって馬鹿だな。
片足をベットに掛けると小さくギシリと鳴る。俺は静かに帽子を取り払い、跳ねた黒髪を撫でる。イーブイに移動を頼むときゅい、と小さく鳴きレッドから抜け出した。そこでようやくレッドの意識は戻る。

「…グリーン?」
「ん?」
「何、」
「何も?」

嘘つけ、とレッドが言いかけたところでトンッと肩を押す。すると無防備に力を抜いていた身体はいとも簡単に倒れ、布団にダイブした。
ぱさりと跳ねた黒髪が散らばり、レッドは目を見開き俺を見る。きょとん、と引っこ抜かれたナゾノクサのような表情をしていて笑える。喉で笑いながら覆い被さるとレッドが眉間に皺を寄せた。

「グリーン何だよ。」
「お前さっきからファイアばっかりだからなー。」
「え?何それし…ッ、」

言い切る前にキスで口を塞ぐと抵抗で肩に手を掛けられ、足が暴れだした。だか利は重力的にもこちらにあるというモノである。
口内の舌を捕らえ口付けを深くすると徐々に抵抗が止んだ。ちゅるり、舌を絡め吸い上げればレッドは耳を赤くし、小さく震えた。

「…ッふ、」
「まあお前が悪い。そーゆう訳だ。」
「待った。何を言って…ッぁ、」

自分の上着のボタンを外し、レッドのTシャツをたくし上げ素肌に触れた。
しょうがない、悪いのは俺じゃない。
俺じゃないったら、俺じゃない。


雀の休息



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