お持ち帰り編


ちょっとした好奇心で、同じマサラタウンから出たファイアという少年を訪ねた。どうやらシロガネ山で修行をしているらしく、僕はその地へ向かった。
実際に会って見ると僕よりも2歳程年下であった。けれどバトルのセンスは大したモノだった。カビゴン同士のキリがない事にならなければ、一体どっちが勝ったのだろう?久しぶりにワクワクした。だがそんな少年の生意気っぷりに苛ついて泣かした事も事実であった。
そして今に至る。










「…はあ、」

シロガネ山に行ったは良い。バトルしたのも良い。問題はその後だ。
色々意地悪をした事もあるけど、あんな風に泣かしてしまうつもりでは無かった。慌てた僕は彼を担いで、荷物共々帰宅をした。泣きべその彼に自分の服とタオルを押し付け、風呂場へ押し込んだ。幸い母さんは出かけていたので問題は無い。
机のメモには『ナナミちゃんと買い物に行ってきます。』と書いてあった。かなり時間がかかるに決まってる。
僕は脱衣場に放置されている下着とズボンの方を手洗いをして上着らと一緒に洗濯機に突っ込んだ。後は全て自動で済む。
あー疲れた。ソファに深くダイブし伸びていると、居間のガラス戸が開いた。

「…おい。」
「…、やあ。」
「何がどーなってる。」
「まあまあ。ココアでも飲んで落ち着きなよ。」

取り敢えずソファに座らせる。ありゃ、服のサイズ全然あってないや。ベルトも渡しておいて良かった。
それにしても彼の髪は風呂に入っても跳ねているなあ、なんて思いながら温かいココアを入れてやる。渡せば飲み始めたから大丈夫だろう。彼の隣に座る。警戒しているからか、肩に力が入る。そりゃそうだ。

「…美味い。」
「母さんの隠し味入りだからね。」
「ふーん。」
「あのさ、さっきはごめんね。」

途端むせた。何やってるんだこの子は。
余りにも咳き込むもんだから背中を撫でてやると落ち着いた。幸いココアは溢さなかったようだ。

「いっ、いきなりなんだよ!」
「え?謝罪だけど。」
「いやそれはそうだけど、お前。」
「謝らない方が…、良かった?」

しどろもどろになっている彼をじっと見つめる。今更だが目尻が真っ赤だ。風呂場でも散々泣いたんだろうに。濡れた髪の毛から水滴が落ちる。
…きちんと拭かなきゃ駄目じゃないか、全く。肩にかけられているタオルに手を伸ばすと、ファイアがギッと睨んできた。

「何もしないよ。」

苦笑してタオルを頭に被せ、わしゃわしゃと水気を拭う。警戒はしているけど大人しい。まるで借りてきたニャースだ。
文句の一つも上げないだなんてどうしたのだろう。僕は一度タオルを取り払い、彼の表情を伺う。

「…ファイア?」




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