あー、疲れたどっこいしょー。
今日は挑戦者が多くて疲れたな、荷物ン所に戻って早く休もう。
そう思ったのだが、自分の荷物のすぐそこに腰掛ける赤い帽子を被った野郎がいた。
誰だっけ、とか思って見ればそいつは俺に気付き、ゆるく手を上げた。

「やあ。」
「いや、何。そこ俺の根城なんだけど。」
「でもいなかったけど。」

だからって何チャッカリと俺の荷物ずらしてんだよ。
疲労の上に積る苛立ち。
ああ、誰か思い出した。コイツはレッドだ。俺よりもだいぶ前に殿堂入りした奴だ。


「なあ、退けよ。」
「だからいなかったじゃない。」
「荷物置いてあんだろ!何言ってんだ。」
「…致し方あるまい。じゃあバトルに勝ったらどくよ。それでどう?」
「ああ?」

何を勝手に話を進めているんだ。これだから主人公気質の馬鹿は困るんだ。こっちは疲れてんだっつーの。
だけど戦わないで黙って退くのも腹が立つ。今思えばコイツのせいで俺は損してんだ。バトルで憂さ晴らしをさせてもらおうか。
腰のボールに手をかけると、ヤツはニヤリと笑った。殴りたい。

「じゃあ始めッ!」
「潰す…!」

互いにボールからポケモンを出し、バトルがスタートした。










「…おい、」
「何?」
「キリがないのは気のせいか。」

互いに出しているのはカビゴンで、さっきから攻撃→眠るの繰り返し。
ようやく互いに残り一体となったのに、これじゃキリがない。
すると奴も同感だったようで、カビゴンをボールに戻した。
何だか凄くめんどくさい。

「なあ。もうめんどくさいから取り敢えずお前出てけ。」
「何それ。僕もめんどくさいんだけど。」
「は?」
「は?じゃないよ。つか何なの、僕が嫌いなの?睨みつけんのやめろよ。」

あー、よくぞ聞いてくれた。何でも良いからその間抜け面を歪めてやりたい気分だ。バトルが互角だなんて思わなかった腹いせもしてやろう。
口端を吊り上げるが、俺は睨みつけたまま言ってやった。


「大ッ嫌いだバァーカ!」
「…。」
「ッうわ!」


奴が顎に手をあてて考えこむ素振りをしたかと思うと、蹴りを繰り出された。
何しやがんだコイツ!間一髪で避ける。


「リアルバトルで戦闘不能になった方がここから出る。それでOK?」
「…上等だ、コラ。」

奴はす、と姿勢を正し俺を睨む。いや違う。ただ見ているだけだ。なのにこの変な威圧感はなんなんだ。そもそも向こうが悪いんじゃないのか。理不尽な奴だ!
腹立だしい。何よりもこんな奴と俺を勘違いしやがった今日の挑戦者が腹立だしい。畜生!
涼しげな横顔を殴ってやりたくて、拳を握り振り下ろす。
だが受け止められ、さらに向こうは再び蹴りを入れてきた。今度は腕を掴まれ、避ける事が出来ない。

「ッぐ!」
「君はファイアだろ?実は噂を聞いて来たんだけど、結構子供だな。」
「るせえ!」
「すぐムキになる。」

痛む腹を手で構いながら俺は睨み続ける。何なんだよ。

「…こんな所に引きこもるにはまだ早いな。ポケモンなしじゃ何も出来ない。」
「ふざけん…ッ、」

な!文句が最後まで言葉にならず消えた。するりと空いた手で腰を弾かれ、距離が零になった。ぐいと足を割ってきたのは奴の足。
何、何がどーなってる。駄目だ、距離が近い何コレ。
奴が半ば混乱仕掛けている俺をくすり、と耳元で笑った。
体がびくりと震えた。

「ッ…!」
「逃げれる?」
「離れろ!離せ!」
「逃げ出してみな。出来るなら、な。」

耳元で喋りながら片手で服をまくられる。なんだコレ、非常によろしくない。訳のわからない恐怖が喉に張り付き、じわりと目の前がボヤける。

「…!」
「逃げないの?…恐いんだ?」
「バッ、うァ…!」

割り込まれた奴の脚に股間をぐり、と圧される。抵抗しようにも体格差でビクともしない。それ以前に力が入らない。
何だよ、コレ…!

「…やめッ、ァ!」
「あれ?さっきの威勢は?にしても可愛い声、出すね。」
「やッ、嫌だ…やァッ」

そのまま、ぐいぐいと圧され、与えられる感覚が未知すぎて恐い。膝ががくがく震える。
溜まりに溜まった涙が恐怖で決壊した。ヤバい、もう嫌だ。
奴がどんな表情かなんてとっくに分からない。ふいに体の拘束が外れ、体重が奴の脚にかかった。

「―――ッ!」
「…あれ?」

強い刺激に俺は顔面蒼白。自由になった手で思わず顔を覆う。何、今の感覚。股間が濡れたような熱いような変な感覚だった。涙が勢いを増して覆った隙間から溢れる。
駄目だもう訳がわからない。

「…あー、ごめん。取り敢えず一度僕の家行こう。」
「…へ…?」
「うん、ごめん。本当にごめん。」

割り込んでいた脚をずらされ、俺は肩に担がれた。さらに奴のボールから出した手持ちに空を飛にぶによって、連行をされたのであった。



赤々
(主人公なんて嫌いだ!)



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