Re&365! 拍手返信と日々の呟き ::小話(シャチと放課後) 夕日が教室を赤く染め上げる。 オレ達の他には誰もいない、静かな放課後。 自分のものとは違う、白い手首を掴んだ。 「…いいのか」 「う、うん…」 「じゃあ、いれるぞ」 「あっ!ま、待って…!い、い、痛いよね?」 「まあな…それは仕方ねェだろ」 「わ、私、やっぱり…」 「あのな、お前がこの状況を作ったんだからな。最後までやろうぜ」 オレがそう言うと、触れ合っている指先が震えた。 何かを決めたオレを見る視線、心なしか潤んでいて今にも泣きそうだ。 「う…シャチ、お、お願い。ローが来る前に」 「お前、やっぱりキャプテンの方が……まあ、やるぞ」 オレが動けば、震える吐息。 「…やだシャチ、い…痛い!」 堪える様に目を細め、手が揺れた。 力で押さえつければ折れそうな手首にやっぱ女だなと実感する。普段はピーピー煩いが、ふと垣間見えたコイツの可愛い部分にオレは小さく笑い、また手を動かしていく。 「…シャチ、は、早く…抜いて」 「ちょっと待て、すぐ終わ…」 「おい、何してる」 ぐすりと鼻をすする音と同時に教室のドアが開く。 見れば、青筋立てたキャプテンが冷たい笑いを浮かべてオレ達(正しくはオレ)を見ていた。 後ろには失笑するペンギンもいる。 対するオレ達はと言えば、息がかかりそうな程の距離で、手を取り合っている。 何か勘違いされても仕方ないのかもしれない。 ああ、終わったと背筋にひと筋の汗が流れた。 「何をしてると聞いたんだ」 近づいてくる足音がやけに大きく聞こえる。 「ち、違うんです!コイツの手のひらにトゲが!」 「……」 まだ鼻をすするコイツの手をキャプテンへと向けた。 事の発端はこれだ。 手のひらの付け根あたり、盛り上がった箇所に茶色いトゲが皮膚の中に入りこんでいる。 「自分では取れないから取って」と針を片手に頼まれ、冒頭に至る。 「おれに言えばいいだろう」 「…ローは、その、結構容赦ないし…い、痛いの!」 「誰がしても痛い。あと針なんて使うな、細菌が入る」 「…う、うん」 「行くぞ。取ってやる」 別れの言葉とメデューサ級の睨みを残し、2人は教室を去って行く。 「なあ、オレ悪くないよな!?」 「ああ…まあ、色々と重なっただけだ」 他人事の様に笑うペンギンを睨み、オレは頭を掻いた。 . back |