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::小話(そんな日もある/後編)

大きな病院ともなれば覚悟はしていたが、総合内科の待合室は人で溢れていた。用意されている座席はほぼ埋まっており、待ち時間も長いことが予想される。

(ローは、いるのかな)

残り少ない空席に座り、ふと思うこと。ローは私がここにいる事は知らないし、私もローがいつ仕事を終えているのか知らない。まだ勤務中であったなら一目見られたら嬉しいけれど、この広い院内では期待するだけ無駄かなと、私は長い待ち時間を本を片手に過ごす事にした。

 ……

どうぞ、と名前を呼ばれて席を立つ。こんな軽症で、と思われないかなと不安を抱きつつ診察室のドアを遠慮がちに開ける。
と、何故かそこには見慣れた姿があった。


「……え、ロー?どうして、」


ここ、内科、だよね?
疑問符はもう1つ。私の前に座っている先生と思わしき若い人……おそらく、この人が内科の先生で。白衣姿のローはその後ろに立ち、眉をしかめて私を見やる。


「どうした。どこにどんな症状が出ている?」

「あの…待って、」

「許可はとってある」


一体何の許可……頭の中で突っ込む。くれはさんの?それともこの内科の(ちょっと青ざめてる)先生の?


「私、大丈夫だから……ちょっと咳が出てるくらいで、」

「咳?咳ひとつでも大病の元かもしれねェ。侮るな」

「う、うん……そっか」


私達とそう変わらなさそうな年の内科の先生は、だんだんと表情が固くなってきている。気のせいか、ペンを持つ手もぎこちない。やりづらい、その一言だろう。何となく二人の上下関係が察知できたが、ここでローを言い負かす術もなく、私は心の中で手を合わせた。


 ▼


診断結果はやはりというもの。でも気疲れという負担が増えたと思う。別にローが診察中に口を挟んだりはしなかったが、あの緊張感の中で診察するのは先生も相当疲れたと思う。何度心の中で手を合わせた事か分からない。

ローは心配性だ。けれどそれは、生死を目の当たりにしているから。そして、私を大事に思ってくれているからだと理解もしている。気疲れの尾も引きつつ、湧き出る嬉しさを抱えてロビーへ向かうと、そこにはくれはさんがいた。


「ヒーッヒッヒッ、どうだい?異常はなかったかい」

「はい、ただの軽い風邪だろうと」

「そりゃァ良かった。じゃ、次こそは産婦人科で待ってるよ」


さも楽しそうに言い残して行った、くれはさんの背中を見送りながら。

(……あんまり考えた事、なかったけど)


まだ先の話だから。でももし、そんな日がきたならば。シャンクスさんや、くれはさん。そしてローはどんな反応をするんだろうか……と、忘れかけていた気疲れが再度肩にのし掛かるのだった。



_________

先生が聴診器で呼吸音をみるときにやきもきしたり、診察で体を触る度に眉間に皺が寄ってたりしていました。

2018.09.19 (Wed) 23:14
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