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::小話(そんな日もある/前編)

― けほっ、


突然、夜中に咳き込んでしまい目覚めてしまう。昼夜の寒暖差が気になるこの時期は体調も崩しやすくなると聞くし、毎年私も当てはまっていた。気をつけねば…と上掛け布団にくるまる。


けほっ、…こほん、…んんっ


私しかいない寝室に響く声音。ローがいなくて良かった。起こしてしまうどころか、只でさえ忙しいのに余計な心配をかけてしまっていただろう。

(うん……大丈夫かな)

少しして落ち着いた呼吸にそうようにして、私はまた眠りに入った。


 ▼


翌朝。
私は会社ではなく、ドラム病院の前にいた。

熱もなし、気力も十分。けれどたまに喉に詰まるような違和感と咳。風邪の前兆かもしれない、とマスクを付けて出勤した。私を含め、その時社内にいた誰もがマスクは“用心の為”と理解してくれていた……社長である、シャンクスさんを除いては。
まるで重病人のように扱われた私は、朝礼も始まらぬうちにドラム病院まで連れて来られたのだ。その本人といえば、大事な商談があるからとベンさんに引き連れられて行ったのだが。


「…どうしよう」


このまま会社に戻りたいが、シャンクスさんの気持ちを無下にするような気もするし。いまいち踏み込めない病院のエントランスそばで立ち竦んでいると、背後から声がかかった。


「どうしたんだい?」

「あ…くれはさん。おはようございます。ちょっと…その、」

「なんだい、産婦人科なら5階だよ」

「ち、違います!そうじゃなくて…!」

「なんだい違うのかい。期待しちまったよ」

「え、期待って…まだそんなって…!」


訂正しつつ今の状況を説明すると、くれはさんは「それなら、とりあえず診察受けな」と楽しげに院内へと入って行く。

素人判断なのだけれど。
ちょっと喉が腫れたりとか、軽度の風邪だとか、そんな程度なんだろうけど。


「…診てもらおう」


少しの疲れを抱えつつ、私も病院内へと足を進めた。


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2018.09.17 (Mon) 00:27
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