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::小話(ラブレター)


「トラファルガー君ってさ、怖くない?」


そんな言葉をかけられたのは、いつだったか。
目付きの悪さと深い隈、それに口数が少ないとなればそんな印象を受けるのかもしれない。


「怖い?ローは優しいよ」

「ふぅん…そうは思わないけど」


私が答えると、少しの嫌悪感を表面に出しながら問いかけてきた女の子は去って行った。







「トラファルガー君ってどんなタイプが好きなの?」

「ロー君と付き合ってるわけじゃないんだよね?」



そんな言葉をかけられるようになったのは、いつからだろう?
女の子達からローに向けられる視線は、変わりだしていた。

ローを見上げる様になった頃か、その声が低くなり始めた頃か、本を持つ手がふと大きく見えた頃か。


「お願い!これ渡してもらえる?受け取ってもらえなくて」

「…え?」

「確実にロー君に渡すにはあなたに頼めばいいって聞いたの!」

「いやいや、そんな…私は、」

「お願いね!」

「え、ちょっと!待って…!」


教室での休憩時間。
隣のクラスの女の子から押し付けられた手紙を落とさないよう胸元で留める。改めて見れば、やはりラブレターか。
本人が受け取らない時点で察して欲しい。私経由で渡したところで、ローは目を通さないどころか即捨てるのだから。それを目にして募るのは罪悪感。

そして案の定、帰宅後に手紙を差し出せばローからは呆れ混じりの視線を向けられる。


「いらねェ、捨てろ」

「……」


手紙を手に立ちすくむ私にため息をつき、ローが手紙を奪いとり…そのまま、ごみ箱へと投げ入れる。


「あの…興味とかないの?ローさ、気付いてないかもしれないけど…結構モテてるんだよ」

「ねェな」

「でもさ、ちょっとは見てあげたら?返事とか…」

「興味もねェのにその気にさせるだろ……お前なら嬉しいか?」

「え、いや…好きじゃないなら曖昧な態度はとってほしくないけど」


…何というか。
手紙すら読まれない現状を見ると、少し気落ちしてしまうのも事実だ。


「同情できる程、興味でも沸いたか」

「え?」

「恋愛に」


確かに周りでは誰と誰が付き合ってるとか話も聞くし、憧れもある。恋愛に興味ない訳ではない。だが、好きな人が…できない。なぜだろうか。
何より、まだまだ友達と騒いでる方が楽しいと思えるのも事実。


「まだ……今が楽しいから、かな?」


ナミやシャチやペンギン、みんなと、そしてローといる時間が。そう答えると、ローはくくっと笑い口角を上げた。
私と同じなのかもしれない。ローも、いつも楽しそうだから。定かではないけど。


「とにかく、もう手紙は受け取ってくるなよ」

「うん…って、ローが受けとれば済む話でしょ!」

「面倒くせェ」


この日からきっぱり断り始めたロー宛の手紙。それが私の下駄箱に入れられるようになるのは、翌月からのことだった。





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ヒロインに好きな人ができないのは、(無意識だが)ローさんより興味を惹かれる人がいないから、だといいな〜という妄想。

2013.06.28 (Fri) 13:48
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