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::小話(緩む頬)


月が昇りきってもいくらか暑さが残る夜。
ベランダにて涼をとっていれば、シャワーを済ませたローがリビングへと現れる。暑さもあってかその上半身はむき出しのまま、私はとっさに目を反らした。

男性が上半身を露出する場面はたまに遭遇する。海であったり、シャツを替える時とか。今でもルフィ君は夏場よく脱ぐし(変な意味ではなく)……と、私にとっては珍しい事ではないが、まさに目の前の、色気を惜しみ無く撒き散らすローに内心穏やかではいられない。


「どうした」

「え?えっと……あ、暑いね」


顔に熱を感じて手で扇ぐ素振りをすれば、ローは一瞬首を傾げたがすぐさま背を向けて薄手のシャツに腕を通す。


(……良かった)


ローを意識し始めて、秘めたままの恋心。一度自覚してしまえばもう後には引けないもので……幼なじみとして築いてきた距離感は、今の私には刺激が強すぎた。
暇が出来ればお互いの部屋を行き来して、一緒にご飯を食べたり、こうして同じ時間を過ごす。それは嬉しい半面、平静を装うのに神経を使う。贅沢な悩みだけれど。


「確かに熱いな」


騒がしい心音に気をとられていれば、そばまで来ていたローが私の首筋に触れた。思わずびくりと肩を跳ねれば、ローも驚いたのか目を開く。"以前"の私なら、こんな事で反応しなかった。


「ごめん…!その……ローの手が冷たくて、びっくりして…」


気を悪くさせたか。それとも私の気持ちを見抜かれてしまったか。そもそもローは勘が良いから、私の変化にもう気付いているかもしれない。いや、バレない様に徹底しているつもりだが。


「……あ、明日!早く起きなきゃいけないからもう帰るね」


すっかり気が動転してしまった私は、そそくさとベランダを後にする。時刻を確認すれば21時を回ったところ。以前もこんな時間に帰っていたし、別におかしくもない。「またね」と言い残して鞄を手に玄関へと向かえば、後ろから追いかけていたらしいローに腕を掴まれる。


「…な、なに」


視線を合わせて一拍、いつになく聡明なローの目が細められて。


「送る」

「だ、大丈夫だよ!すぐそこだし」

「おれの気が済まねェ」


有無を言わさぬ目配せを残し、掴まれた腕から熱が離れた。上着を取りに戻ったのか、布が擦れる音を耳に入れながら私はまた熱を帯び始めた頬に手を添える。
あと数秒、ローが戻るまでに……この緩んでしまった表情は締まるのだろうか。やはり悩みはつきない。


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2015.09.20 (Sun) 00:31
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