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ひと駅、ひと駅とまた過ぎて行く。次は最寄り駅であり、おそらくローもそこで降りるだろう。さて、どう声をかけようかと頭を捻っていると…


((……))


食い入る様に眺めていた人物と目が合ってしまった。
お互いに驚きの表情を浮かべたのと、車内放送で最寄り駅が呼ばれたのはほぼ同時。ローはすくりと席を立ち、連結部分をくぐり抜けて私の元へと歩み寄る。


「帰りか?」

「えっ!う、うん。そうなの……ローも?」


我ながら不自然な答え方ではあったが、ローは気にしていないのか短い返事だけ。内心ホッと息をつきながら、開かれたドアから駅のホームへと降り立つ。
気遣う様に触れる、私の腰を支えるローの手。ごく自然にされた行為に緊張してしまう。私の頭は高速回転中だ。


「えっ、と……今日は車じゃないんだ?」

「あァ」

「ローが電車なんて珍しいよね…な、何かあったの?」

「……、」


答える数秒の間。
それさえ気にしてしまう何て、私はどうかしてる。重症だ。様々な可能性をたぐり寄せながら追求してよかったものかとローを見ると、その口が開かれた。


「お前が、言ってただろ」

「…え、私が?何を…」

「"電車から見える景色が好きだ"ってな」


それは数日前の話。いつも車通勤のローに対し、電車通勤の私が言った言葉で。


「それで…電車にしたの?」

「悪いか?」

「ぜっ、全然!ほら、だって…今日の夕日も綺麗だったでしょ」


息がつまりそうだ。多忙なローが、何気ない会話の言葉に……あんなに真剣に眺める程、私の言葉を聞いてくれていた事が嬉しくて。


風が流れる。
電車が動き出し、車体で隠されていた夕日が顔を出す。街を染める夕日は、ちゃんと私まで染めてくれているだろうか。


「ロー、ご飯まだだよね?良かったら…」

「どこかで飯にするか?」

「うん!」


少しでもそばにいたい。私の欲は増える一方。だが、とめられそうにもない。

本当に、自分でも呆れるくらい……好きになってしまったのだから。


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2014.08.11 (Mon) 09:09
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