Re&365! 拍手返信と日々の呟き ::小話(ほたる、その後) 「お前さァ、あんまキャプテンを煽んなよ」 「あら何の話?」 「昨日だって言ってたろ……ほら、あいつら」 あくまでも小声で。隣の席に座るシャチからの抗議に笑い返し、私はふたつ前に座る親友とクラスメイトを窺った。 今日もまた、彼女たちは他愛ない話で盛り上がっている。 …最近仲が良いわね、と。 そう口にしたのは、ただのからかいだ。親友にではなく、遠目に見ていたトラ男へ。 探りを入れるまでもない、親友はまだ恋だの愛だのと考えて異性と接してないから。本当に、たまたま席替えで隣になったクラスメイトと(こちらに気はありそうだが…)話しているだけで。 それでもトラ男の方は気になってしまうのだから、この幼なじみ達の事情は面白いのだ。 そんな過程があっての昨日の下校時とは違い、今朝のトラ男の表情はやけに冴えていた。その理由も分かる。 「バカよね」 「…ん?」 「何も心配しなくていいってのに」 昨日、親友は言ったのだ。 それはまさに隣席の彼からの情報で。 "ナミは知ってた?あの河川敷でさ…蛍が見れるんだって!" 続く、言葉。 "…ローと見に行ってみようかな。最近見ないねって話してたんだ" 親友の中で、トラ男の存在は大きい。恋ではない、でもいつも隣にいる幼なじみ。単純な関係ではあるが、第三者がそう易々と入り込めやしない絆がある。 そんな幼なじみ達を視界におさめれば、片方はまだ談笑中、片方は自席で読書中。 じれったい、早く何か変わればいいのに…と無言の野次を送っていると、親友が急に席を立った。 「それでね、…あっ、ごめん。目に何か入ったみたい」 「おれが見てやろうか?」 「え?あ、大丈夫大丈夫!ナミ、鏡持ってる?」 「持ってるわよ。大丈夫?」 片目を手で覆いながら、私へと寄ってくる親友。鏡を差し出したまではいいが、それは親友が受け取ることはなかった。 ……まあ、来るとは思っていたけど。 「見せてみろ」 予想通り、割って入ってきたのはトラ男で。 そしてこの瞬間に分かる。 クラスメイトに言われた時は大丈夫だと離れたのに、親友はトラ男をごく自然に受け入れ、されるがまま顔や目をいじられている。 まさに無意識下での線引きだろう。後ろで眺めていた彼もまた、理解したのか肩を落としていた。 「あー…確かにもう心配いらねェな」 確信めいたシャチの声。 それはまた、目を瞑ったままの親友の前で……クラスメイトへと悪そうに笑む、トラ男の表情を見たからだった。 . back |