Re&365! 拍手返信と日々の呟き ::小話(帽子) 今話題の映画を見に行こうと、誰が言い出したんだっけ。 ラブロマンスでもない、アクションでもホラーでもない。先ほど私達が見終わったのは、幼い頃に見ていたアニメの劇場版だった。 懐かしみながら気楽に見ていたのは前半までで、終盤になるとものの見事に涙を誘われてしまったのはルフィ君とウソップ君、そして私。親子連れが行き交う映画館の前で、涙する学生の姿は何とも言えないだろう。 「まったく、あんた達は…」 呆れた様子のナミやロー、失笑するシャチやさりげなくハンカチを差し出してくれるサンジ君にただただ申し訳ない気持ちになる。 迷子になったゾロ君を探しに行ったペンギンが映画館から出てくれば、「とりあえず移動するわよ」とのナミの声。 賑わう繁華街の中、こんな泣き腫らした目で歩くのは少し恥ずかしい。鼻をすすりながら俯いて歩いていれば、頭に柔らかな衝撃がくわわった。 「…ロー?」 被せられたのは、ローの帽子だった。大きさが合わずにずり落ちるのを手で押さえ、ローを窺えばその口角は大きくつり上がっている。 「情けねェ面」 「…悪かったわね」 むっと唇を尖らせれば、被ってろと言わんばかりに帽子の上から頭に手をのせられて。またずり落ちた帽子をあげれば、クセのある髪をおおっぴらにしたローは先を歩いて行った。 . back |