Re&365! 拍手返信と日々の呟き ::小話(アルバム2/2) 「いい写真が撮れたかも!」 「そりゃ良かったな」 「ローも撮っていい?」 「勘弁してくれ」 そう笑い返せば、カメラ片手に膨れ面になる幼なじみ。振袖を着たこいつの後ろには、紋付袴を着た新郎と白無垢と綿帽子姿の新婦。式を終え、撮影会へと切り替わったこの場は先ほどまでの緊張感はなく、和やかな雰囲気だった。 今日はこいつが楽しみにしていた従姉妹の結婚式。 「眠れない」と自分事のように緊張していたのに呆れるしかなかったのは昨晩のこと。それも一転、新婦を見る輝いたこいつの表情とその艶やかな姿に釘付けになってしまった、おれ自身にも呆れ笑いを送る。 未だ続く撮影会、それを横目にふたりで境内を散歩する。 舞う様に落ちる葉は赤く、それを目当てに神社を訪れる観光客。振袖を着たこいつは目立ちはするが、目を離せば迷子になりそうな程に人は多い。 足を進める中、ふと"あの写真"を撮影した場所が目に入る。 今でこそ記憶に刻むように過ごす日々、だがあの頃は違っていた。忘れていた訳ではない、だが写真として形に残ったものを見るのが初めてだった為、ただ驚いたのだ。 こいつと出会ってまだ日が浅い、あの頃のおれの表情に。 手を繋いだ、幼いおれ達。 金や白の模様が入った紅葉のような赤い着物を着た幼い少女。幸せそうに微笑むその隣でただ無表情に立つだけのおれは、何とも滑稽であった。 「どうしたの?」 いつの間にか足を止めていたおれを窺う瞳。その視線と合えば、自然と体が動いていた。 帯を崩さない様、背に手をかけてその場所へと導く。先に石段を降りて手を貸せば、不思議そうな表情を浮かべながらも手を重ねてくる。一段差で並べば背丈も揃い、隣には紅葉の樹、背景は本殿。 「…似てるだろ、あの時と」 「え?もしかして七五三の写真のこと?」 目を丸くさせたこいつの手からカメラを取り、適当に通りがかった大人に声を掛ける。 「写真苦手じゃないの?」 「…記念だろ」 らしくない、と自覚している。だからもう目も合わせられやしないが、向けられたカメラには口元を緩めた。 もうあの写真を変える事はできやしない。 だが、せめて"あの頃から変わった"のだと残す為に。 . back |