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::小話(寒い朝の話)


あ、珍しいな…と声を抑えたまま思わず口を開けてしまう。

ゆっくりと離していく身体と身体。重なっていた熱が離れ、その間に朝の冷えた空気が入りこむ。ふるりと身を縮め、まだ規則正しく上下する身体には掛け布団をかぶせる。

それでも目を覚まさないのはやはり珍しい事で、私は瞬きを繰り返す。2人で朝を迎えた日は、私が目を覚ませばローも起きるのが常だったから。



今日は互いに仕事が休みの日。だからゆっくり寝ていても良かった。
半分覚醒してからの二度寝できると目を瞑る瞬間は、最高に好きな時間でもある。けれども今、そちらを選ばない。

音をたてないよう上半身を起こし、ゆっくりと手を伸ばした。指先に触れる、少しクセのある髪は昔から変わらない。昔はこの様に触れる事もなかったので、見た目より柔らかいんだな…と知ったのは恋人になってから。

こんな発見は他にもたくさんある。幼なじみとは違う、恋人としての発見は知る度にドキドキするし、むず痒くもなる。
幼い時からそばにいた仲。一度離れた期間があったとはいえ、今になってこんな関係になるなんて何とも不思議な気持ちだった。

…でも、一番に思うのは。


「おれの顔はそんなに面白いか」


伏せられていたはずの目蓋が開き、髪を撫でていた手を掴まれた。ローの温かな手が私の冷えた手を包み、そのまま布団の中へと誘われる。


「起きてたの?」


そう問えば、ゆっくりと口角がつり上がる。


「お前の百面相が面白くてな」

「…そんな顔してたつもりはないよ」

「くくっ、何を考えてたんだ?」

「え、何をって…」


頭に浮かんでいた二文字。
思わず頬に手を添える。確かに、にやけてはいたかもしれない。


「…幸せ…だな、って」

「……」

「お、おかしいかな?」

「…いや、」


即座に顔を背けたローに一瞬戸惑うが、私は気付く。正面に見える赤く染まる耳、それは寝起きだからじゃない…と思う。

何だか私まで俯いてしまった、寒い日の朝の出来事。




2013.11.02 (Sat) 09:28
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