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::小話(寒い夜の話)



日が差していても風が冷たいと感じた日の夜、揃って寝室へ入れば朝とは違う室内に気付いた。


「今日寒かったじゃない?だから毛布が恋しくなって…」


柔らかい毛布を被って笑う姿に、幼い頃を思い出し目を細めて笑う。こいつは昔から寒くなると毛布にくるまって寝る癖があり、まるで寝袋のような姿で寝ていたものだ。
月日が経って変わるものもあれば、やはり変わらないものもあるようだった。


就寝時のこいつは例えるなら猫だろう。寒ければ暖かさを求め、毛布にくるまり丸くなる。暑ければ涼しさを求め移動し、ベッドから抜け出してフローリングの床で寝ていた時もあった。何度、抱き上げて戻した事か。

動物的な本能なのか。
普段はきっちりとした性格なだけに、こいつの就寝時の行動は笑えるものだし呆れもする。


今は窓を閉めていても少し肌寒さを感じる室温。幸せそうに毛布にくるまっていた体を引き寄せ、額に口付ける。


「残念だが、今日はそいつの出番はねェな」

「え?」


はがした毛布をベッドサイドに落とし、体を寄せたまま横になる。掛け布団をかければ十分に暖かい。


「…必要ねェだろう?」

「うん、暖かい」


はにかみながら頭をすり寄せてくる。その行動に笑ってしまう。それこそ夏は、どんなに腕の中に招いても逃げられていたというのに。


「いい季節になったもんだ」

「やっぱりローは寒いの好きなんだ?」

「…まァな」


他愛のない話をしながら夜を過ごす。そんな、寒くなり始めた日の出来事。




2013.10.22 (Tue) 00:47
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