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「んだよ、来てやったぞ!劉黒!おい!」



劉黒様の部屋から聞こえるはずのない声が聞こえた。
右手には握り締めた紙。
それが白銀宛に書いた劉黒様の手紙だと知るのは、もう少し後だった。



「「あ」」



互いに目が合い、沈黙が続いた。
先に口を開いたのは彼の方だった。



「この間は…、言いすぎた。俺が…悪かった。」
「あ…いや、別に…。」



そう言ってまた目をそらす。



「…し、白銀!」
「なんだ。」
「私が…変われたのは…、白銀の…おかげだよ…!」



考えて、考えても、白銀が居たから…今の私が在るんだ。



「あり…が、とう…っ!」



振り絞って言った一言。
珍しく、白銀は優しい目つきをしていた。



「あん時は色々…苛立ってて、ついお前に八つ当たりみたいなことしちまって…。」
「白銀の言う通りだったよ。私は劉黒様を慕ってるんじゃなくて、劉黒様に依存してた。」



劉黒様という存在に縋っていくことしか出来なかった私。
でも、今は違う気がした。
何かが変わったというよりは、ふっ切れたという方が無難かもしれない。白銀を見ると、さっきまでの顔とは打って変わって眉間にシワを寄せていた。



「最近、劉黒って聞くとイライラすんだよ。」
「…?劉黒様が、嫌いなの?」
「劉黒を嫌いなんじゃなくて、お前が──好き、だから…──。」



いきなりの言葉に、私は少し固まった。



「お前から劉黒の名前が出るだけで腹が立つんだよ。」
「そ、それってまさか…」
「嫉妬、だな。」



そういって笑った彼は、クルリと私に背を向けた。



「悪い。柄にもねぇことしたな。今のは忘れろ。じゃあな。」



去っていく彼の背中を見ていた。
私の心の中には結論が、一つだけ残っていた。
それは、
…彼のことが…"好き"って事…───。



「…っ…待って…白銀!…私は…白銀が…!」



手を伸ばすと、振り返った白銀に捕まれた。
そのまま引き寄せられる。



「しろ…が、ね…?」
「だから、来たくなかったんだ。」



悲しそうに言った彼は私を腕の中に納めた。
少し力が強く、抜け出そうにも抜け出せそうもないくらい。
『離したく、なくなるだろ』
耳元で囁かれた言葉はきっと、忘れないだろう。



「…で?愛しのリューコ様はどうした。」
「"憧れ"のリューコ様だよ。」
「はっ、何が違うんだ。」
「憧れは愛にはならないから。」



そう言って私は彼と唇を重ねた。







こころがきみを探してる
(見つけた、私だけの貴方)







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朔夜様、リクエストありがとうございました!

今回は、過去編の白銀を書かせていただきました。
なんだか、短編なのにややこしい設定に…orz


これからも当サイトをよろしくお願いします。


お題@確かに恋だった


 
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