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「あの、柳くん。」

「どうした、柳生。」

「これを…。」





柳生が渡したのは分厚い辞書。
受けとった柳は怪訝な顔をしている。





「これを、朱鷺原さんに渡しておいてくれませんか?」





『私は先生に仕事を頼まれていて…』
と申し訳なさそうにする柳生を見て、俺は『分かった』とため息混じりに返事をした。
最近会っていないな、と思うと会う口実ができて少し嬉しくなった。
彼女のクラスへ行くと、すぐに見つけた……彼女と…弦一郎を。
俺が近づくと会話がはっきり聞こえてきた──。





「…好きだよ。大好き。」





彼女の口がこう動くなんて考えられない。
言われた弦一郎は一瞬で赤面していた。
…わけが……分からなかった…。
“何故若菜は弦一郎に、好きと?”
早足で近づき、辞書を机の上に置いた。
二人は目が点になっている。





「柳生からだ。」

「…っ蓮二…!!」





極力短い言葉を発し、そのまま教室を出た。






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