「朱鷺原!!」
「あ、蔵!おはよ。」
そう言ってハイタッチをする。
それが私達の一日の始まりなのだ。
だが、蔵が何か嫌に…というか何か企んでいるように、笑っている。
「な、なんや…蔵。」
「“なんや”やないで。今日!何の日や?」
「はぁ?今日…?」
4月14日…だったっけ…。
…なんの?
何やろ…。
「歴史かなんか?」
「歴史っちゃ歴史なんやけど…」
「はぁ?ハッキリせんなぁ。ほな、ウチは行くで。」
「ちょ、朱鷺原っ!」
蔵の呼び掛けも無視して、私は手をヒラッと振り、教室へ向かった。
蔵が言ってた…今日って、何やったんやろ…?
考えているだけでは仕方ない。
………だけど、なーんかモヤモヤする。
何か、忘れて………?
「よ!朱鷺原!!」
「わっ!!…あぁ、なんだ謙也。」
「えぇ、何やのその扱い…。って、まぁそないなことは置いといて。今日どないする?」
まただ。
今日?
今日何があるっていうんだ…。
「今日?何の話やねん。」
「は?………何、忘れたん?」
「だから何を。」
「今日…白石の誕生日やで?」
「あ…」
嘘、もしかして、もしかして、朝蔵が言ってたのとか、あの笑顔は……!!
しまった!!!
「ごめん、謙也!」
「…?あ、ちょっ!!」
急いで教室を出て、蔵のクラスへダッシュした。
ダンッと音を立てて扉を開け、すぐさま包帯野郎を見つける。
「蔵っ!」
「朱鷺原、どないしたん息切らして…」
「ごめん!!」
頭を思いっ切り下げた。
蔵は不思議そう…というか、不審そうに“朱鷺原”と呼んだ。
「……ウチ、蔵の誕生日ってこと、すーーーっかり忘れとった!ごめん!」
素直だからこそ傷つくもんやな…。
と白石が思っていたなんて、朱鷺原は知るよしもなかった。
蔵は苦笑して、私の頭をクシャっと撫でた。
「なぁ、“ごめん”は分かった。他に俺に言葉、かける気あらへん?」
ニコッと笑った幼なじみは嬉しそうに言った。
そうして私は言うのだ。
とびきりの笑顔で
「蔵、誕生日おめでとう!!」
まるでそれは、伝染するように
(あなたもとびきりの笑顔で)
(「アカン、俺めっちゃ幸せや」)
*********
白石誕生日おめでとう。
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