私は天才
私はこのホグワーツ始まって以来の天才だと思う。勉強はそんなに出来ないけど、魔力は使っても使っても底を尽きたことがない。さっき、ホグワーツでの初めの授業があった。呪文学の授業である。それはホグワーツの生徒なら越えなければならない最初の壁だ。なんでも、聞いた話によるとそこで習う浮遊呪文でこの先7年間のホグワーツ人生が決まるといっても過言ではないらしい。今朝斜め前に座っていた先輩の情報によるとスリザリンであの程度の魔法が使えないと純血?でないかぎり虐められてしまうかもしれないとかなんとか。こ、これは良からぬ事を聞いてしまった!朝ご飯はきっちりモリモリ食べる派の私があまりの絶望でご飯をおかわり出来ないぐらい消沈していた。しかし、私が凄く良い子だったからなのか神は私をまだ見捨ててはいなかったようだ。そう、その栄えはる呪文学の講義で私は私が普通ではない、天才だということに気づいてしまったのである!



「ウィンガーディアムレビオサー?」

「ちがうよ、なまえ」

隣に座る顔が整った少年は私を見て馬鹿にしたように言う。あぁ、今日もリドルは素敵なフェイスだなぁーなんて考えていると、ちょっと、むすっとしたような声がしてきた。

「こう、だよ。ちょっと聞いてるの?」

「き、聞いてるよ!」

お腹すいたなー。やっぱりおかわりしとけばよかったと今朝の事を呑気に後悔していた。だってそもそも純血だとか意味わかんないし、それになんだかめんどくさい。虐められてもリドルが居るし別に良いかと今朝の絶望感なんてすっかりさっぱり忘れダラダラ杖を振り回す。それにしてもリドルの杖を振る時のあのドヤ顔はなんなんだろう。いや、顔が良いからドヤ顔に見えるのか、それとも本当にドヤ顔なのか…。ふーむ。卵が先か鶏が先かの様に永遠と考えがぐるぐるしてきそうななか、ピーン!っと閃いた私はリドルに飛びっきりの笑顔を向ける。

「ねえ!リドル見て!こうでしょ? “ウィンガーディアム・レビオーサ“」

と渾身のリドルのモノマネを披露しながら杖を振ってみる。大袈裟すぎたかなとも思ったけど、ちょっとナルシストなリドルがムカついたのでまぁいいだろう。そんな私の顔が気に入らなかったのかムスッとした顔をしたリドルが私に声をかけようとしたその時だった。あれ?あれれ?リドルの机の前にあった羽だけではなくクラス中の物というあらゆる物がふわふわと浮きだしたのである。机、絵画、ノートや教科書。2.3、いや5メールは軽く浮いてるだろう。うわー、リドルすごいなー、やることが尋常じゃないな、少しやりすぎな気もするけど。流石の私もここまで真似出来ない。優等生気取ってたくせに流石ドヤ顔美少年のリドル様である。あっ、あのムカつくグリフィンドール生まで浮いてやがるいい気味だ!なんて、思ってたらリドルが目を見開きながら私の肩に手を置いてきた。

「なに、どうしたの?」

なんて白々しく聞いてみる。どうせ自慢する気のだろうと思ってたらリドルが、慌てた声でなまえ!落ち着いて降ろすんだ!!なんて言うから、なんのことだかさっぱりわからなかった。え?私?さっきの高クオリティリドルモノマネ?なんでもこの浮遊呪文の出どころは私だったらしく確かにさっきから手元の方がギシギシいびつな音がしていた。きっと失敗してると思ってたから全く手元を見て居なかった。慌てて視線を戻すと、私の杖先から凄い勢いで魔法が出ている。ぁあ!やばっ!っと杖を手放したのとリドルが私に向かって"落ち着いて"と声を掛けたのは同時だった。次の瞬間身の回りでドタァアアンとすごい音がなった。

「えへ、皆楽しかったでしょ?」

なんて誤魔化してみるけど、やばい。この状況はやばいかもしれない。え、やばい。自分の顔を見なくても青ざめていくのがわかる。辺りはしーんと静まり返り生徒達が戸惑い気味にお前のしわざ?と言いたげな目で私を見てくる。わ、私だってわざと浮かせようだなんてそ、そんな思ってなかったんだからっ!恐る恐る振り返って先生の顔を伺うと、さっきまで教科書や羽ペン、なにに使うかさっぱりわからない道具達と一緒に浮いてしまっていたからなのかそれらの下敷きになりながらポカーンとした顔でこちらを見ている。やばいやばいやばい見る見るうちに赤くなってゆく先生の顔をどうしようかと言い訳をフル回転で模索していたら、教室の外から慌ただしい音がした。

た、大変です!!!!なにものかの襲撃かもしれません!!!

ああ、大声で人をテロリスト呼ばわりする声が聞こえる。この声から察するにこの教室の外にも被害が出たらしい。え、なに、そんなに、高クオリティリドルモノマネがすごかったの!?なんて思いながら助けを求める様に隣のリドルを見る。元わといえば、リドルのナルシストがいけないんだよ。た、助けて…!と縋るような目でリドルを見ると、私とは真逆で彼はなんだかとても楽しそうな顔をしていた。

「スリザリン50点減点!!!」




この高クオリティリドルモノマネ事件が起きたのが今日の午前の授業の話しである。しかし、ポジティブだけが取り柄の私にとってさほど問題ではない。だって、50点減点されたところで隣にいるリドルが何倍にもして、我が寮に返してくれるだろう。期待してるぞリドルっ!!むしゃむしゃと今朝食べれなかった分を取り戻す様に食べる。ホグワーツの料理は量があって助かるぜ。まったく。

「・・・なまえ。」

「なーに?リドルきゅーん。」

「馬鹿みたいな口調と呼び方で呼ばないでくれる?まぁ、馬鹿は今に始まったことじゃ無いけど。君、あれだけ派手に荒らしといて体とか怠くないの?」

「ん?・・あぁ、リドル君。心配してくれてありがとう。しかし、それは愚問だよ。だって、私にはこのプディングがあれば、元気100倍なんだもん!」

なんて言いながら手元にあるプディングを貪り食う。さっきの事件以来ずっと周囲の熱い熱い視線を受けているから、隣にいるリドルまでもが見つめてくると顔に何かついてるのか心配になってくる。

「ついてるよ。」

「え?ついてるの?」

「ほら、口元の右の方。」

「あ、本当だ。・・・って、ぉおおい。リドルっ!私の思考詠まないでっていつも言ってるでしょ!」

「わかりやすいなまえが悪いよ。」

「ちょ、ぇええ!」

「うるさい。」

バシッ!っといきなり頭にチョップされ、危うくプディングを手から落としそうになった。むっ。文句を言おうとしたけど、なんだかそんな事はどうでもいいくらいお腹が空きて来た。あれ?今、食後のプディング食べたばっかなのになー。もぐもぐ手当たり次第食べてると"よく食うね。太るよ。"って隣から嫌みな声が聞こえてきた。無視だ。無視無視。お構いなしにペロリと辺りの食べ物を貪ると次第に満足してくる。隣に座ってるリドルは私に興味を無くした様にお行儀よく紅茶を飲んでいる。ふーん、周りのを見渡すと好奇心に満ち溢れた生徒達と目が合った。なんでも、浮遊体験ができたやら、ズラ疑惑のある先生のズラがぷかぷか浮いたやら、皆結構楽しめたらしい。まぁ、私の浮遊呪文も少なからず人の役に立ったのかもしれない。そんな生徒達を見て今日は、自分を讃えたいと思う。えっへんっ!そんなドヤ顔である私を見て、リドルは深いため息をついたのだった。
>>
TOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -