【03】
リドルさんと分かれアパートに荷物だけ取りに帰るとすぐにホグワーツへと向う。12時にダンブルドア先生にご教授して頂くことになっていたからギリギリ間に合いそうだ。ホグワーツに着きダンブルドア先生との待ち合わせの教室まで急ぎ足で歩く。

「よぅ!なまえ!」

「こんにちは、なまえ先生でしょ?」

「まだ先生になってないだろ?なまえってば図々しいな!」

「もぅ、生意気ね。ほら速く行かないと授業はじまるわよ!」

「あっ、やべっ。じゃあ、またななまえ!」

バタバタと走って行く生徒達は元気で良いと思う、ここが廊下でなければの話だけど。まぁ、確かに彼らの言う通り私は教員では無い。なので減点もする必要も無いだろう。卒業してから2年しか経って無いため後輩や私を担当して下さった教授達も多く、元グリフィンドールと付き合っていた為かスリザリンだった私にもこうやって声を掛けてくれる他の寮の生徒も居る。職場に恵まれているかもしれない。来学期まであともぅちょっとだ。授業の内容も教科書を進めながら実技も加えて良いと言っていたし、少しアレンジを加えて頑張ってみるのも良いかもしれない。

「私が担当するんだから全員OWLやNEWTでE以上を取ってもらわなくちゃ!」

「ほっほっ、気合十分じゃの。良いことじゃ。」

「だ、ダンブルドア先生!?」

「いや、実に良い意気込みじゃった。君をDADAの教授に指名して良かったよ。」

「・・・ありがとうございます。」

「そんな君には今日も沢山働いて貰わなければの。」

「・・はーい。」

ダンブルドア先生は雑用を笑顔で押し付けてくるからいやだ。まぁ、時々美味しいケーキをお土産にくれるけど。今日の雑用はホグワーツ内の点検らしい。このホグワーツ城は複数の魔法がかけられている。外部からの侵入者が入れないようだったり、姿くらまし姿現し防止、階段なんかもちゃんと動くよう継続的に魔法をかけ今の状況を保っている。そのため、魔法が薄れてないか点検する必要があるのだ。そんなの屋敷しもべ達にやらせれば良いのに・・。テストの採点や教室の掃除ならまだわかる。しかし、校内点検なんてこんなでかい城を隅々歩き回るのもかなり疲れる。くそぅ、この雑用はいつまで続くのだろうか・・。
結局8時ぐらいまで城内を歩き回された私はヘトヘトになりながら帰路に就く。ああー、今日も一日色々大変だったなぁ。雑用もそうだけど、あさ、2人が目覚めない内に帰ってしまおうと馴れない早起きをしたせいでいつもの倍疲れてしまった。でも、いつまでも私とエドワードとの仲を認められてもらえないのも困る。あー、忘れないうちに父の機嫌取りの為のワインでも買って帰ろう。そう思い足をホグズミードへと向けた。


ーーー

んー、これなんかどうだろう。でもお値段がちっとも可愛くない。それに父は赤の方が好きだった気がする。多くのお酒を取り扱っている酒屋へと来たもののここ10分ぐらいずっとこの調子だ。あんまり自分でお酒を買ったことの無い私には何が美味しいのかさっぱりわからない。それに生憎所持金もあまり持ち合わせて居ない。うーん、どれがいいのかな・・。悩んでいるとふと店の外に知って居る人を発見した。

「ブラック先輩!」

少し大声で叫んでしまったせいか少し不機嫌そうな顔をしていたものの私だと気づいた瞬間優しい笑顔を向けてくれた。

「なまえ、久振りだね。」

「はい!先輩、元気そうで安心しました。」

「お陰様で、半年後には結婚も決まったよ。」

「え、先輩も結婚ですか。」

「あぁ。婚約者だったヴァルブルガ・ブラックとね。結婚式には君も呼ぶから是非来てほしい。」

「そうなんですか。・・・私、実は初恋の相手、ブラック先輩だったんです。だから、ちょっとだけ複雑な気分です。」

「・・知ってたよ。2人で作った真実薬、本当は僕に飲ませようとしてたんだろ?」

「ふふっ、やっぱりブラック先輩はお見通しでしたか。若気の至りってやつですよ、怒こらないでください。」

はぁっと態とらしくため息をつく先輩はやっぱりかっこいい。4個上だったブラック先輩と一緒に真実薬を製作したのは良い思い出だ。その頃1年生だった幼い私が恋に落ちるのは簡単で、薬が仕上がっていく度、先輩への気持ちも大きくなっていった。大好きだったな。でもその大好きな気持ちと共に変な焦りも膨れて行った。先輩は私の事どう思って居るのか。少しはチャンスがあるのか、幼かった私は出来上がった真実薬をこっそり使ってしまおうと考えたのである。まぁ、それをしなかったのは、先輩から婚約者の存在を聞いてしまったからである。大泣きしながらブラック先輩の胸に飛びついた私に先輩はなにも言わず泣き止むまで私の背中を撫でてくれたのを覚えている。初恋は叶わないそれを証明してくれた人だ。そんな先輩が晴れて婚約者と結婚か。ちょっと複雑だけど、今なら心から祝福できる気がする。

「先輩の婚約者さん見たこと無いけど、きっと凄い美人さんなんでしょうね。」

「・・君には劣るよ。」

「嘘つき。あの時ブラック先輩が私に婚約者が居るって言ってなかったら真実薬を飲ませてあげたのに。」

「僕も怖い後輩を持ってしまったようだね。」

「先輩。私を泣かせたあの時のお詫びにワイン選ぶの手伝ってくださいよ。」

きっとブラック先輩はこんな所じゃお酒は買わないだろうけど、私よりは見る目があるはずだ。断られる前に先輩の腕を掴んで店内へと入る。

「先輩、知ってると思いますが私お金あんまり持ってないんで安くて美味しいやつ選んでくださいね?」

思い出話に花を咲かせながら先輩におすすめのワインを選んでもらった。ちょっと財布の中身が寂しくなりそうだけど先輩が折角選んでくれたものだからこれにしよう。選んで貰った赤ワインを持って会計をしようとするとブラック先輩が割り込んで来た。

「これも。」

そう言って店員さんに1本の高そうなワインを渡す。

「先輩、いくらお世話になったからって私、庶民なんで奢ってあげれませんよ?」

「わかってる、これは僕から可愛い後輩へのプレゼントだよ。」

そう言って心なしか顔を少し赤くさせる先輩はやっぱり大好きだったブラック先輩だった。かっこ付ける癖に結構シャイなんだよなぁ。そんなとこも素敵だけど。・・もし、あの時先輩に婚約者が居なければ、付き合えたとしたら今もこうやって2人で楽しく過ごせて居ただろうか。・・でも、それはきっと先輩がブラック家である時点で叶わないことなのだろう。知的で、かっこ良くて、私が調合ミスして落ち込む度優しく頭を撫でてくれた優しい先輩。あの2人きりの空間はもぅどこにも無いんだ。真実薬が完成しても先輩が卒業までの2年間、2人で色んな研究を行った。先輩は優秀で色んな刺激をくれて、1年の時に終わったはずの初恋だったのにそんな先輩のせいでずるずると随分引きずってしまった。あぁ、若かったな、でも楽しかったし、幸せだった。叶わない恋でも私にとってとても大切な時間だった。

「・・先輩、ありがとうございます。」

「どうしたしまして。」

「先輩、私やっぱりちょっと寂しいです。」

「僕もだよ。・・なまえ・・君、今付き合っている人が居だろ?」

「なんでわかったんですか?」

「僕も、君が初恋だったから、かな。」

「うそ・・。」

「4年生の時、真実薬を飲まされなくて本当に良かったと思うよ。婚約者の存在を話せば直ぐに顔を歪ませて泣いてしまったけど、その涙ですら本当はとても嬉しかったんだ。・・僕はブラック家だから、君の気持ちを受け止めることは出来なかったけどね。」

「・・・真実薬を使わなくても、今、あの時の先輩の気持ちが知れたので良かったです。あの、ブラック先輩。」

「なに?」

「次生まれ変わって、もし、先輩が貴族とかそんなしがらみが一切無くて、平凡な一般庶民だったとしたら私と付き合ってくれますか?」

「・・あぁ。約束するよ。」

「私、先輩が卒業するまでの3年間、いや卒業してからもずっと先輩の事好きでした。婚約者が居ても、たとえあのブラック家でも、想うのは自由だと思って。あの、先輩、ご結婚おめでとうございます。私、初恋の人が先輩で本当に良かったです。」

「僕も君で良かったよ・・・結婚式待ってる。」

「はい!絶対行きますね!」





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