【02】
「おはよう、なまえさん。」

朝6時に目が覚めた。昨日父は大分酔っていたし姉もお酒に強い方じゃないのできっと今頃スヤスヤ寝ているだろう。昨日の今日であの父に会うのは気が引ける。こっそり一人暮らししている私のアパートに帰ってしまおうと思っていたのに声をかけられてしまった。

「あぁ、リドルさん。朝早いんですね。」

「君はもぅ行ってしまうのかい?」

「はい。父が起きてしまう前に家に戻ろうかと。それにダンブルドア教授のお手伝いもあるので・・。」

「そう。でも初めて来た彼女の家に1人置いてけぼりにされるのはちょっと、ね。」

あぁ、確かにそれもそうかもしれない。きっと2人共お昼過ぎぐらいじゃないと起きては来ないだろうし。うーん、でもどうしたら良いんだろう。姉を無理矢理起こす?機嫌の悪くなった姉の世話なんて死んでもいやだ。

「朝ごはん食べに行かない?」

「え?」

「君、朝食まだだろ?」

「は、はい。」

「僕結構良い所知ってるんだけど、どうかな?」

にっこり笑顔が眩しい。流石顔が整って居る人は違う。でも、姉の彼氏と2人きりでご飯なんて良いのだろうか。姉にばれたらやっかいだ。道徳的にもギリギリな気がする。うーん。

「ふふっ、意外と用心深いんだね。大丈夫、君のお姉さんは暫く目を覚まさないと思うからバレないよ。」

確かにバレなきゃ良いのかもしれない。彼の立場になって考えてみると姉の目が覚めるまで知らない家に1人ぼっちてのは確かに辛いものがある。仕方ない、将来の義兄のために人肌脱ぐか。わかりました。そう言って了承すると彼の姿くらましで連れて行ってもらうことになった。


カランカラン・・

「うわぁ、結構オシャレなとこですね。」

連れて来て貰ったのは落ち着いた雰囲気の小洒落たカフェだった。ちょっぴり二日酔いが残っている私にも優しい所だと思う。素敵な所だなぁ今度エドワード連れて来ようかな。席についてサンドイッチとカフェオレを頼むとリドルさんはコーヒーだけを注文した。お腹空いてないんだろうか。なんだか申し訳ない。昨日とは違いテーブルが狭い分彼との距離も近く感じる。

「あの、リドルさん。」

「なに?」

「その、お幾つなんですか?」

「あぁ、26だよ。君は20?」

「そうです、姉とは8個違いなので。」

「1年、在学期間が被って寮も一緒だったのに全く関わらなかったね僕達。」

「そうですね。でもブラック先輩から良く優秀な先輩が居るって聞いてたので、もしかしたらリドルさんの事だったんじゃ無いかなって思って・・。」

「あぁ、オリオン。懐かしい名前を出すね。仲良かったの?」

「はい、在学中はよく2人で研究してました。ブラック先輩に教えて貰ってばかりでしたけど。」

「ふーん。僕も是非ご一緒したかったよ。それで、君達は在学中なんの研究をしてたの?」

「あぁ、ブラック先輩とは真実薬の研究をしてたんです。」

「・・・あれは難易度が高くてとても学生のレベルでは無理だと思うけど。」

「確かに材料を手に入れるのも一苦労でしたけどブラック家になればそれも一瞬でしたし、それに要領を掴めば簡単でした。と言っても1年掛かっちゃいましたけど。」

「それで出来上がった真実薬を使用したの?」

「使わないと本当に完成したかわからないじゃないですか。」

「誰に使ったの?」

「・・・内緒です。」

「ふーん、そこまで話して内緒とは君って意地悪だね。」

「嫌ですよ私、魔法省に厳重注意なんて受けて自宅謹慎だなんて。」

「学生の時作成した時点で教員認定剥奪ものだと思うけどね。」

「ふふっ、それにもぅ時効です。あ、ほらコーヒー来ましたよ。」

美味しそうなコーヒーと共に私のサンドイッチとカフェオレも運ばれて来た。うん。美味しそう。二日酔いもだんだん覚めて来て、それからも穏やかな雰囲気で朝食を共にした。
案外良い人かもしれない。紳士的だし顔も良いし、それにノリもいい。父が認めたのもわかる気がする。魔法薬学の知識が豊富だし、これなら父の好きな闇の魔術に着いても詳しく知っているだろう。

「でも驚いたよ。君みたいな優秀な人が元グリフィンドール生と付き合ってるなんて。君の父も反対して居たし、どんな人なの?」

「あぁ、昨日はごめんなさい。私のせいで空気を悪くして、エドワードとは在学中から付き合ってるんです。同い年なんですけど、すっごく優しくて気が合うんですよ。」

「へぇー、その彼も君みたいに魔法薬学とか好きなの?」

「うーん、そうですね。魔法薬学は好きみたいです。在学中は良くペアを組んでましたし。」

「闇の魔術に対しても?」

「・・・父から何か聞いたか知らないですけど、闇関係のものは嫌いです。私もエドワードも。」

「そう、勿体無い。折角DADAの先生になるのに。」

「闇の魔術が嫌いだからなるんですよ。」

「そっか、込み入った話をさせてしまったね。それじゃあ僕はそろそろ失礼させてもらうとするよ。」

時計を見ると11時を少し過ぎていた。確かにそろそろ帰った方がいいかもしれない。姉が起きて私とリドルさんが居ないと知ったら大変な事になるだろう。

「私も、アパートに帰ります。」

自分の分は出すと言った私を軽くあしらって払ってくれたリドルさんはやっぱり6歳も年が離れて居るだけあって大人だ。姉が惚れた理由もわかる気がする。

カランカラン・・

「リドルさん、ご馳走でした。」

「またご馳走してあげるよ。」

「え、いや、姉が怖いのでやめておきます。」

「ふふっ、そこは嘘でもお願いしますって言うのが礼儀だよ。」

「お、お願いします・・。」

「約束するよ。それじゃあまたね、なまえ」

そう言って爽やかに去って行ったリドルさんはやっぱりキザだと思った。








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