組み分け帽子
汽車がホグワーツまで着くまで私達はぎこちない雰囲気の中、たわいも無い話をして楽しんだ。まぁドキドキして全く話の内容を覚えていないのはここだけの秘密である。ホグワーツに着いたあと船に乗せられここ大広間で組分け式が始まった。なんでも、4つの寮グリフィンドール、パッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンにそれぞれ生徒を振り分けるらしい。先生の話によると寮にはそれぞれ特色と言うものが有るらしく、己に1番合う寮にあのボロボロな帽子がいざなってくれる様だ。
・・・なるほど。なるほど。レイブンクローはまず無いな。だって私勉強なんてやったことが無いし、そもそも英語自体書けない。んー・・、グリフィンドールか、勇敢ね。私にはとてもだけどそんなの無いな。もしあったら迷わず孤児院を飛び出して居たと思う。うん。見かけによらず臆病者ねってミコにも言われたし。そうなると、残るはパッフルパフとスリザリンか。うーん。

ーーなまえ・・なまえ!

「なまえってば!」

「・・リドル?」

「さっきから呼んでるのに君って奴は・・」

「ごめんごめん。それで?」

「僕と一緒の寮に入らない?」

「・・え?」

「せっかく仲良く慣れたんだ、僕は君と一緒の寮になりたい。」

”君は嫌?”なんてそんな素敵な顔で見つめられたら照れてしまう。

「い、嫌じゃ無いけどリドル、決めるのは私じゃ無くてあの帽子だよ?」

「解ってるよ。聞いた所によるとあの帽子勝手にほいほい寮を振り分けている様に見えるけど、実際の所生徒自身の意思を最優先にしてくれるらしい。」

「え!そうなの?」

「あぁ。さっき生徒達が話しているのをたまたま聞いたんだ。」

「じゃあ、リドルと同じ寮になれるかもしれないね!」

「なまえ、成れるかもじゃ無くて成るんだ。良いかい、名前順で行けば僕の次に君の名前が呼ばれる。」

「あ、じゃあ私がリドルの決まった寮にお願いすれば良いんだね!」

「そうゆう事だよ。なんだ頭空っぽそうに見えるけど、結構理解が速いじゃない。」

「えへへ。」

”ちゃんと僕の組分けが見ておいてね。”そう言って名前が呼ばれた彼は組分け帽子の元へ行ってしまった。リドルか、きっとレイブンクロー辺りだろうな。話しただけでも彼に知性が有るのが解る。どう見ても私と彼では同い年には見えない。レイブンクローか、私上手くやっていけるかな。何分、頭には全く自身がない。どうしよう、いじめられたら・・。いや、私にはリドルが居る。で、でももしリドルに他の友達が出来たら・・・。少々不安になってくる。小さな脳みそで精一杯考えていると、大きな声で”次、なまえ・みょうじ!”と呼ばれ驚いた私は慌てて席に着いた。しまったっ!リドルの組分けをちゃんと見るのを忘れた!・・大丈夫、リドルの事だきっとレイブンクローに決まっているはずだ。ちらっとレイブンクローの席に目をやる。
・・・あれ?リドル、レイブンクローの席に居ない・・。汗がぶわぁと出て来る。おかしい、なんでだ。冷や冷やしながらリドルの居る寮を探す。寮の名前を言われる前にはやく見つけ出してお願いしなきゃ。1番左に見えるグリフィンドールをガン見するけど、皆うじゃうじゃ立ったり座ったり騒いで居るため中々全体が見えない。くっそ!邪魔するなよ、大人しく座って!!!


「・・君は行きたい寮が決まってるようだね。」

「そ、そうなんです!良く解っていらっしゃる!!」

急に頭上から聞こえてきた声にびっくりしたけど、良かった、助かった。これならリドルの居る寮に振り分けてもらえる。

「・・でも、それは君の意思では無い様だ。」

「・・・えへ。」

でも私だってリドルと同じ寮になりたい。友達が居ない中での学校生活を考えた時点で背筋が震える。

「君はとても臆病な様だ。それは、育ちが関係しているようだがもっと自信を持った方が良い。」

「・・・っ、何もわからないくせに軽々しく言わないで!」

「うーむ。今まで何人もの生徒を分けて来たが、わかってないなんて初めて言われた。・・・そんな私の意見だが、君にはグリフィンドールが1番合って居るように思う。」

「・・嘘だよ。だって臆病者だって貴方が言ったんだよ。」

「確かに。君は臆病だ。だが、勇気がないのと、自身が無いのはまた別だ。これから大きな至難にぶち当たったとき、君には誰にも負けない勇気が備わっているだろう。」

「・・・私、さっきの彼が行った寮に行きたいの。」

「解っておる。彼はスリザリンに組分けした。」

「なら私もスリザリンが良い。」

「・・君には向いて居ない。私はお勧めしないよ。」

「でも、私は彼と、リドルと同じ寮になるって約束したの。私、約束は破ったら駄目だっておばあちゃんに言われてきたから、ねっ、お願いスリザリンにして!」

「・・ふむ。解った。そこまで君が言うなら、君は・・・スリザリン!!」


ぱちぱちと拍手が聞こえる。きっと今まで組分けられてきた新入生の中で一番時間が掛かってしまったから自然と注目の的になってしまったんだろう。スリザリン意外の三寮からは残念そうな声が聞こえてくる。

「・・待て、なまえ・みょうじ」

「なに?」

「育ちが全てでは無い。さっきはすまなかった、君に失礼な事を言ってしまったようだ。」

「ううん、良いの。貴方には感謝してる。」

「・・幸運を祈る。」






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