まるで死人のように
「ナギニちゃん?」

父と一緒にお茶を楽しんでいたら1匹の大きな蛇が部屋に入ってきた。私達は多分初対面では無い。けど、彼女がいる時は決まって他のお客様が居たから私は部屋に隠れて居なきゃならなかった。なので今まで彼女の事はチラッとお互い見たことがあるだけで、こうしてちゃんと出会うのは初めてだ。

「こんにちは。」

「こんにちは、私、なまえっていうの。」

「・・お嬢様の事は知ってますよ。我が君の大事な一人娘ですもの。」

「ふーん、嬉しいわ。」

ナギニちゃんと初めての会話はなんだか新鮮で蛇というものは人の言葉がわかるというのを初めて知った。

「ナギニちゃんって賢いのね。人間の言葉がわかるなんて。」

「いいえ、お嬢様。私が人間の言葉を話しているのではなく貴女がベビの言葉を理解して話しているのです。」

「え?」

蛇語なんて話している感覚がなかった。目の前の父に目を向けると感心した様にこちらを見ている。

「やはり僕の子だったか。」

「お父様?」

「嬉しいよ、なまえ。君が僕の才能を受け継いでくれて。」

「お父様も、話せるの?」

「もちろんだよ。」

そんな事今まで聞いたことがなかった。パーセルタングと言うらしいこの力は魔法界でも話せる人ら殆ど居ないらしい。

「その瞳、我が君と一緒で美しいわね。」

「・・瞳?」

目の形を褒められるは良くあるけど、瞳自体はあまりなかった。・・多分母に似た真っ黒な色だからだ。

「ほら、我が君と同じでたまに紅く染まる。」

「・・え?」

お父様の瞳はよくお客様が来る日に紅く染まる。何故かは解らないけど触れてはいけない部分だと思っていた。

「気づいてなかったのかい、なまえ?」

「・・知らなかったわお父様。」

「この前オリオンが来ていた時、君の瞳はずっと紅いままだった。」

「あぁ、だからお父様、私を見て笑ったのね。」

「嫌だな。笑ったんじゃなくて喜ばしく思っていただけだよ。ほら、おいで。」

そう言って私を膝の上に乗せる。たまにしか甘えさせてくれない父が今日は珍しい。

「・・嬉しそうだね、なまえ。」

「だってお父様が私に優しいんだもの。」

「嫌だな。僕は常に君に優しくしているつもりなのに。」

そう言って私の髪を愛しむように撫でる。

「ねぇ、お父様。」

「なに?」

「私のこと好き?」

「そうだな。愛してるよ、なまえ。」

「ふふっ、嘘つき。」

そう言った私に父は少し驚いていたけど直ぐに笑う。本当に良い性格をしている。父の唇はレギュラスと違って少し薄い。少し触れてるみると探るような父の視線とぶつかる。

「でも、私はお父様を愛しているわ。心の底から。」

そう言ってちゅっと触れるだけのキスをした。レギュラスとは違い少し唇の薄い父の唇はかたくて、冷たかった。



まるで死んでいるみたいに。






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