カーテン越しの彼

マダムによると退院までこの医務室から出ては駄目らしい。うーん。暇だなぁ。昨日は私がご馳走を食べ終えて、眠りにつくまでずっとリドルが一緒に居てくれたから、ここまで退屈だとは思わなかった。いつになったら退院出来るのだろう。
さっき陽の光で目を覚ました私の胃はぎゅるるるっと大きな音を立てていて今日も元気な様だ。朝食をとりに広間へとこっそり行こうかなと思い、試しに起きてみると昨日とは違い手が動かせるぐらいに回復していて、声もすかすかじゃない。これで思う存分食べれる！良かったぁーなんて思ってるとリドルがやって来た。


「おはよう！リドル！」


「もぅ、起き上がっても大丈夫なの？」


「リドルのお陰だよ。ありがとう。」


「あぁ、忘れないでね。これは貸しだよなまえ。」


3ヶ月経ってもリドルの性格は相変わらずのようだ。 やっぱイケメンってのは顔だけなのか。


「それで退院は？いつ出来そうなの？」


「あと1週間だって、でもこの調子だともぅ1回寝たら大丈夫な気がする。」


「そう。」


「それで、リドル。なにしに来たの？」


「君が退院するまで面倒を見てくれって、頼まれたんだよ。」


「あぁ、そうなんだ。」


「今日も嫌々ながら可哀想な君に餌でもくれてやろうと思ったけど、それも必要ないみたいだ。」


”手はもぅ動かせるんでしょ？”そう言った彼に向かって手をグーパーして、バッチリだと伝える。


「ふーん。君って魔力は化け物並みにあると思ってたけど回復力もだったとは、知らなかったよ。」


「まー、これもある意味、年の功ってやつですかね。」


「君、意味解ってないでしょ？」


「あ、ばれちゃった？」


「誤魔化したいならもっと上手く騙さないと、余計怪しまれるよ。」


そう言うリドルの目が少しだけ赤い気がする。


「君、あの距離から落ちても、死ななかったんだ。」


「・・・なに、どうしたの？」


「普通魔法使いだってあの高さからあの加速で落ちて行ったら、普通は即死だよ。周りの人たちは、奇跡だって言ってたけど・・」


「リドル・・・」


「なに？」


「私は人間だよ？」


「・・・そう。」


「リドル、今日はもぅ1人になりたい。」


「わかった。またね、なまえ。」


「・・・。」


自然となぜだか涙が溢れてくる。リドルは、私のことを否定しなかったけど、きっと心の奥では私が人間ではない、化けものだって思ってるに違いない。彼の冷たい赤い目を思い出すと怖くて、忘れようと枕に顔を埋め深い眠りにつこうとする。不思議とさっきの空腹感はなくて、あるのは強い孤独だけだ。眠ろう、何も考えたくない。そう思い目を閉じた私はやっぱり単純に出来ているみたいで、何分もたたないうちに眠りに落ちてしまった。





「はぁ、相変わらず馬鹿だななまえは・・」




カーテン越しの彼の声は私の耳に入る事無く、消えていった。