安心出来る世界。
8歳になるまで私は孤独でいっぱいだった。父と母の記憶はまったくない。なんでも、段ボールに入れられて捨てられていたらしい。一週間経っても一向に目覚めない私が満月の夜、急に泣き始めたらしい。その目を開いたら瞳が蒼色にキラキラ輝いていて、そんな私に誰もが驚き、そして戦慄したらしい。人の目の色では無いそれは、人々を怖がらせるのには十分だった。

それからすぐに孤児院に捨てられ、その孤児院も私を捨てる。その負のサイクルがいく度と無く繰り返され、気がつけば私はいろんな孤児院を転々としていた。

孤児院が変わるたび私は緊張した。バレないだろうか。また捨てられないだろうか。友達は出来るだろうか。力を使う時と満月の日以外は日本人らしい真っ黒な色をした目だったので、最初は誰もが私に優しくしてくれた。けど、バレるのは一瞬で、暗闇でも蒼く輝く私の瞳を見た人達は”化け物だ!”と、私を貶し、虐めた。この孤児院でもまた私の友達はとうとう土の上を歩いているありんこぐらいしか居なくなってしまった。あぁ、なんで私は蟻じゃ無いのだろうか。そしたら沢山友達がいたかもしれない。


そんな私を8歳になる前の日からホグワーツ入学まで引き取ってくれたのは、遠い親戚だと言うおばあちゃんだった。私に親戚なんてものが存在するなんて、その時初めて知った。なんでも、孤児院の庭で1人砂遊びして居た私を見て確信したらしい。私が一番初めに捨てられたのはきっと7年も前の事なのに、きっと目の前のおばあちゃんは私の顔に惹かれたのだろう。そぅ思っていた。


今思うと私はその頃から魔力の量が普通の魔法使いと比べおかしかったのかもしれない。よく、柴犬のミコとお話ししていたし、どんなに大きな怪我をしても一瞬のうちに治っていった。また、嵐で荒れている空を一瞬のうちに晴れにし、七色に輝く虹のアーチをででーんと10個作り上げたり、はたまた池の水を空っぽにしたり。その度"お前は大胆だねぇ"とおばあちゃんはにこやかに笑いながら喜んでいた。

そんなヘンテコな私に、ホグワーツからヒゲがもじゃもじゃのクリスマスで見たことのあるような人が来て私を勧誘した。クリスマスじゃないけど良い子な自信があったので最初はプレゼントをくれると思っていたのに、学校かよと不貞腐れながら柴犬のミコと戯れていたら、おばあちゃんは私を"ホグワーツに是非"と言っていた。一瞬驚いたけど、おばあちゃんも私の事がめんどくさくなったんだなと思う。おばあちゃんは産まれて初めて愛をくれた人だ。だから捨てられても感謝の気持ちしか無い。それから、サンタさんと杖や、制服など買ってちょいと満足げに家に帰ったら、おばあちゃんは風に飛ばされ無くなっていた。

無くなっていたのだ。砂のようにさらさらと消えて行ったのである。初めて人の死を見たので、人は砂になってキラキラと夜風に吹かれながら飛んでゆくのだと知った私はなぜだか、とても満ち溢れた気持ちになった。よかった。これでもぅ、おばあちゃんに迷惑をかけないですむ。
そんなことを思っていたらサンタさん、否、ダンブルドア先生が来て、おばあちゃんが風に吹かれとんでいくのと私を見て、やっぱりかという顔で私の頭を撫でてきた。ふと、庭にいるはずの柴犬のミコの声が聞こえて、後ろを振り返るとミコも横たわりキラキラとした砂になるとこだった。

"ねぇなまえ、あなたのおばあちゃんは素敵な人だったわ。"

ミコの声が聞こえる。いつもミコとお話ししていたけど、おばあちゃんの話をしたことはなかった。今日のおやつの話や、山に住んでる動物達の話を聞かせてあげたりと一方的に私が話して、そうなんだ。と、相槌を打ってもらうだけの中身のない話しばかりだった。

"あなたのおばあちゃんはあなたと同じだったわ。いつしか力を使わなくなったけど、綺麗な笑顔で私の事を見てくれた。なまえ、あなたも、きっとあの子の様に、あたなのおばあちゃんのようになれるわ。"

なんて、今まで一方的に話を聞いてたお返しだと言わんばかりに語るだけ語った後、ミコも風に流されおばあちゃんと共に行ってしまった。





私は本当に一人ぼっちになったんだなと泣きそうになったけど、ホッとする気持ちの方が大きくて、笑顔を浮かべながら気づいたらありがとうと言っていた。なんでこんなこと言ったのか覚えてないけどきっと、わかっていたのだと思う。池の水が朝起きたら元通りになっていたことや、満月の夜になるとおばあちゃんは”秘密よ”と、言って満月の日限定の特別なジュースをくれた。それはきっと全部あの人が私と一緒だからだと思う。多分、もっともっと早くから風と共に流れてゆくのを望んでいたのだろう。私のせいで予定は大部遅れたがようやく解放されたんだろう。私はふと隣にいるダンブルドアを見て”しーっ”と、唇に人差し指を宛てた。今日くらいは力を大量に使かっても良いだろう。そう思った私は、山にある名前の知らない木々を桜の花で満開にし、そして、満月を桜色に染め上げた。”おお。綺麗じゃの”と感心したよう言うサンタさんそっくりな彼にはなんだか日本の春は似合ってないなぁって思う。それから暫く二人でキラキラと光る風を眺めていた。


「さて、#なまえ#。お主には自分が何者なのかそして、その膨大な魔力を制御する力を身につけて貰わなといかんの。」


「サンタさん。私知ってるよ。」


「いや、知らない。お主は全てを見ておらんのじゃ。」


「そう?でも私は、きっとそっちの世界に行ってもこれからもずっと一人ぼっちだよ。」


「#なまえ#、そんな悲しい事を言うものではないぞ。未来は誰にもわからない、もっと広い世界を見るべきじゃ。」


「そっかぁ。じゃあ、そのかわりサンタさん。私にプレゼントをちょうだい?」


「はて、なにがお望みかの」


「私が心から安心できる世界をちょうだい。」


「ふむ。困ったの。世界は独りでは勝手に作れないんじゃよ」


「そうなの?」


「そうじゃ。もし誰かが私利私欲のために世界を作ってしまったら他のものが困ってしまうからの」


「そっか。じゃあ、私が誰かと作り上げる世界を見守って。ね、それくらいなら出来るでしょ?」


「そうじゃの、#なまえ#。お主が心から安心出来るような素敵な世界を作れるよう、そして決して道を踏み外さないようこの老いぼれが見守っておろうかの」


「うん!ありがとうサンタさんっ!」






安心出来る世界。




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