器用じゃない君が好き/レギュラス
器用じゃない私は、小さい頃からなにも上手く出来なかった。魔法も箒も、そして歌さえも、全部下手で私にはなにも取り柄がなかった。だから、目の前の男を見ると、悲しいような、悔しいような気持ちになる。


「なまえ、そんなに見ないでくださいよ。」


呆れた様にチラッと私を見てすぐに手元の課題に取り掛かる彼は、人並み以上に器用だ。


「ねぇ、レギュラス。」


「なんですか?」


私を見ないで答える彼は素っ気ないと思う。


「私、貴方になりたいわ。」


「あぁ、確かに僕の方が顔の作りはいいですもんね。」


「・・・え?」


「あ、そうゆう話じゃなかったんですか?」


すみません。なんて彼は言うけれど、確かにそうだ。あれ、悲しくなってきた。


「冗談ですよ。なまえ、ほら、泣かないでください。」


「・・・泣いてないもんっ。」


目の前が霞んできて、今にも涙がこぼれ落ちそうになるのをなんとか踏みとどめる。黄昏ていた私にとって、彼の心無い一言はショートケーキの上にある苺を食べられた時みたいに悲しい。くそぅ。こんな、男の前で泣いてなんかやるか。これはもぅ、私の勝手な意地である。


「はぁ。」


彼はため息をつくと、シワひとつないハンカチを私に差し出してくれる。


「・・・ありがと・・」


「それで、なんで僕になりたいんですか?」


彼は私を見兼ねてしまったのだろう。羽ペンを置いて私に少し困った顔を向けてくる。


「器用じゃないから。」


「は?」


「レギュラスみたいに器用な人になりたかった。・・・あと、顔も・・。」


最後に彼に言われた顔の事も付けたしておく。結構根に持つぞ、私は。
しばらく考える様な顔をした彼はボソッと


「なまえは、不器用だから可愛いんだと思います。」


なんて言うから、涙も引っ込んでしまった。あぁ、ハンカチ借りたのにな・・。驚いた顔をした私を見て、いたずらっ子のように彼は笑っている。


「僕は、貴女のその、不器用なとこが大好きです。」


彼の突然の告白に、あぁ、器用じゃ無くてよかった。なんて思ってしまった私は、いつの間にか笑顔になってしまった。


「私も!私もレギュラスのことだいすきだよっ!」


レギュラスは嬉しそうに笑い、そして、私に口付けた。あぁ、器用じゃ無くても、彼が好きでいてくれるなら良いのかもしれない。それだけで、私にとっては価値のあることだ。


「それに、僕は結構、その、なまえの顔も・・好きです・・」


照れている彼は新鮮で、何故だか私も恥ずかしくなってくる。でも、なんだかとても、幸せな気分で満ちあふれる。

そんな私に気づいたのか彼は少しハニカミながら、


「なまえが笑顔になってよかったです。」


なんて言うんだから、さっきまでの憂鬱な気持ちはどっかに飛んで行ってしまったみたいだ。






器用じゃない君が好き。

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