私を愛してくれた世界/リドル
ここから見る景色は見慣れたはずなのに、彼と一緒だと、また一段と輝いて見えるから不思議だ。夜の事情が終わった後の気だるい身体を起こし、薄いシーツを羽織って、ここからの景色を見る。夜風が私の髪をさらさらっと梳かす。ネオン街がキラキラと輝いて、そんな世界を見下ろす私はこの世界を支配した様な感覚になる。あぁ、綺麗だな。ここは30階建ての高級マンションで、マグルの世界でちょっとした成功を納めた私は、結構裕福な暮らしをしている。


「・・・なまえ・・」

さっきまであんなに身体を重ねていたのに彼の耳ともで囁く声は、甘くて身体の奥がきゅってなる。そんな私を知ってるのか、彼は私の腰に手あて撫でてくる。

「・・だめ。私明日撮影があるの。」

「大丈夫だよ、あと1回ぐらい。」

「リドル、貴方、学生の時より元気になったんじゃない?」

ふふっと微笑んで私を引き寄せるリドルの胸に少し体重をかける。

「なまえ、僕はマグルが嫌いだ。」

「知ってるわ。でも、私は彼らが好きよ。」

だってこんな私に、彼女らは憧れ、彼らは恋い焦がれる。そぅ、皆必要としてくれるのだ。
私の頭を優しく撫でてくれる彼の匂いで全ていっぱいにしたくて、彼の胸に顔を押し付ける。肺の奥まで吸って、彼のことを忘れないように・・・。

「君は、もっと賢い女だと思ってたよ。」

「そんなこと言って、リドル、貴方が最初に私を捨てたのよ。」

「僕は、そんなつもりはなかったよ。」

「でも、解ってたんでしょ。こうなるって」

彼は学生時代からズバ抜けて頭が良かった。そんな彼に、誰しも尊敬して、そして恋をしていたと思う。

「なまえ、愛してる。」

私のそれに彼の唇があたって、ちゅっと私達には似合わない可愛らしい音がする。

「私も、愛してたわ。」

「今は、違うのかい?」

「そうね、貴方が私の大切な世界を壊そうと考えていなければ、そうかもしれない。」

「じゃあ、もし壊したら、嫌いになるの?」

いたずらっ子のような顔しをして、私を見つめてくる。

「でも、確かにそうだ。僕はこの世界が憎くて堪らない。そして、その世界で僕が愛した君が生きているのだって許し難いことだ。」

「わざわざそんな事言う為に、マグル界に来たの?」

「いや、マグルの記事で君が大きく取り上げられていたのを見てね。驚いたよ。ーー絶世の歌姫ーーだっけ?君が、誰よりも美しいことは知っていたけど、歌が上手かったなんて、知らなかったよ。」

「貴方の前では一度も歌わなかったもんね。」

「どうして?上手いんだろ?聞かせてくれたら良かったのに。」

「あら、貴方は私の身体しか興味ないと思ってたわ。」


ふふっと嫌味な顔で笑ってやった。私達がホグワーツの生徒だった頃、ずっと好きだった彼に呼びかけられた。憧れの彼だったから、その時はすごく嬉しかったし、なにを言われるのかと思って、凄くドキドキした。なのに、彼は、空き教室に私を案内したと思えば、急に身体を求めたのである。僕の事好きなんだろ?一緒に気持ち良くなろう。なんて、私の気持ちを無視して目の前の彼は私を抱いたのだ。

「あの時、初めてだったのに、本当、最悪だったわ。」

「そんな事言って。君だって気持ち良さそうにして、僕を求めていたくせに。」

そんな彼は、私を襲ってからというもの、週に1回は私のことを抱きに来た。彼の言う通り、気持ち良かったし、彼も私のことを愛してくれていると思っていた。しかし、それは間違っていた様で、それ以外なにもなかった。まともに話したのだって、ベットの上だけだった。
そんな欲にまみれた私達が卒業して、3年は経つ。今更私になんの用だろう。

「なまえ、迎えに来たんだよ。・・・君は僕が捨てたなんて言ってたけど、ずっと待ってたんだろう?僕が迎えに来るのを。」

そぅ。いつも、彼から私を求めてくれたし、それが当たり前だった。だから、卒業してから、私を求めてくれなくなった時は、あぁ、もぅ終わったのかと落胆した。それから、私は彼を忘れたくて、小さい頃から大好きだった歌の世界で生きていこうと、今まで走ってきた。

「・・・なんで今なの?なんで、やっと夢を掴んだのに、貴方はまた私を連れて行こうとするの?」

「夢?君の夢は、僕の隣に居ることだろ?それに、君を迎えに来るのが遅くなってしまったのは、申し訳ないと思ってるよ。僕だって、君をこうして抱きしめたかった。」

ぎゅっと私を抱きしめる彼の腕が少しだけ痛い。

確かに、彼が、私を求めてくれなくなってから、私の夢は、彼とずっと一緒に居たい。なんて、私に似合わない、乙女チックなものに変わってしまったかもしれない。

「だけど、君がこんな所に居るなんて驚いたよ。君は賢かったし、魔法省にでも行ったと思ってた。そのせいで、君を探すのに時間がかかってしまったしね。」

「貴方に、リドルに、見つけて欲しかったの。」

「知ってたよ。」

「今度はもぅ、ずっと一緒にいてくれるの?」

「喜んで、お姫様。僕と一緒に世界を作ろう?」

ふふっ、自然と笑顔になる。彼が居たら他になにもいらない気さえしてくる。たとえ、彼がやろうとしてる事がどんなに、酷いことでも。私は、彼が居たらなんだっていいのかもしれない。

答える代わりに、私から彼にキスして、さっきの続きをしようと合図する。きっとこれが了承の合図だって、彼は気付いているだろう。
彼の手はこの会えなかった3年間を埋める様に激しくて、そして優しかった。もぅ、なにも考えられなくて、私の思考は彼によりドロドロに溶けていった・・・




ばいばい。私を愛してくれた世界。
 

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