隣で眠るクラピカに小さくキスを落とせば、彼はうっすらと目を開けて上体を起こした。

「おはよう、クラピカ」
「ああ、おはよう」

ぎゅっと甘えるように首に腕を回せば、クラピカは私のおでこに小さくキスを落とした。
ああ、幸せだな、なんて思いながら、彼の温もりに酔いしれる。
静かに頭を撫でるクラピカの手に夢心地になりながら、私はそっと口を開いた。

「ね、クラピカ」
「なんだ?」
「好き」
「…ああ」

毎朝変わらないやり取り。

「大好きだよ」
「ふ、知っている」

眩しそうに目を細めて、クラピカは笑った。
そんな彼が愛しくて、それと同時に切なくて。
変わらないと知りながら、僅かな希望を手離せずに私は繰り返す。

「ねえ、クラピカ」
「ん?」
「クラピカは私のこと好き?」

そう言えば彼は悲しそうに目を伏せて、それでも微笑みながら私の唇に何回も唇を重ねる。
優しくて、甘くて、何より切ないそれは、まるですがるように震えているから、私はいつも泣きたくなるんだ。
彼の心を縛り付ける鎖は、あまりにも強すぎて。
無力な私には、彼を貶めた運命を憎むことしか出来なくて。
壊れてしまいそうなこの温もりを、失わないようにと強く抱きしめた。

「ごめんね、クラピカ」
「…なまえ」
「私は大丈夫だから…だから、悲しい顔をしないで…」
「…なまえ……すまない…っ」

クラピカに強く抱きしめられて、私は彼の胸に頭を預けた。
見えなくなったクラピカの表情に胸を締め付けられる。
きっと彼は、一人で苦しんでいるのだろう、と。
身体を包む温もりと、確かに聞こえる鼓動を感じながら、私は静かに目を閉じた。


あなたは綺麗に微笑むけれど
(けして言葉にはしてくれない)
(痛みも、想いも、何一つ)





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