らぶはぐ | ナノ

どろどろの闇

「それが俺の調査結果だ」


ずずず、とラーメンを啜りながら長髪の男−桂小太郎−は言い放つ。


「数日で済ませてしまうなんて貴方本当に何者なの」
「ただの攘夷志士さ、」


それ以上何も言わないまま乾いた音だけが静かに鳴る。調査結果が記された数枚の紙を捲りながら、私は目を疑うしかなかった。それとなく当時から可笑しい点はあったけれど信じたくなかったし、こうして見ると本当に虫唾が走った。


「自分の愛するものを奪われれば奪ったものを殺め、また愛したものの命さえ簡単に奪っていった、とあるが…その顔を見る限り心当たりはあったのだろう?」
「………、」


思い起こせば心当たりしかなく、私は紙をくしゃりと握りつぶす事しか出来なかった。これまで私がお付き合いした男性は皆薬物で亡くなっていったし、父上もきっとそうなのだろう。薬を精製する上での事故だと考えてはいたもののそうではなかった。母上を亡くした私をとても可愛がってくれていた優しい父上まであの人が奪っていったのだから。それを分かった上で僕が守るだなんて乾いた言葉を信じた私が馬鹿だったのよ。


「恐らく今度はなまえ殿だろうな、」
「…そうでしょうね、」


互いに一つの答えに辿り着く。自分の思い通りにならなければ簡単に手を下してしまうのがあの人ならば、きっと今度は私を殺しにくるだろう。死んだふりをしてまで私をどうしようと言うのか、これ以上私に何を望むのか。分かってあげようと必死に愛していた私は何の為に生き、あの家を守っていたのだろうか。こみ上げてくる怒りを堪えて震えながら覚悟する。


「…もう終わりにするわ、」


少し震えた私の携帯電話を余所に、彼は表情ひとつ変えず―――そうか、と呟いた。
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