帰って来たのは良いけれど、一人だけ姿が見えなかった。
だから探しに行こう。
城内には居るはず……。








『ッ左近!!』

「っ、」

『此の……私をシカトすんなッ!!』

「っ……八重、」





半ば強引に呼び止める。
後ろで勝家が“鹿徒？”なんて言ってたけど気にしない。
もうツッコんでも意味無いから。




『私、キミに何かしたっけ？』

「……してないっスよ」

『ああ……嫉妬か、』

「!?」

『私はキミのこと嫌いじゃないのに、キミは私を避けるのか。悲しいな……。また一緒に居れる日が来ると思ってたのに……』

「で、でも俺……八重が好きなのに、八重は勝家ばっかだし……」

『ごめん。確かに私は勝家が好きだよ。忍として失格かも知れないけど此れだけは譲れない。でも私を好きになってくれて有り難う。出来れば此れからも親しくして貰うと嬉しいかな』

「っ、八重ー!!」

『あはは!!』

「……八重様……」

『あれ、私……兜取れって言わなかったっけ……？』

「……」

『えいっ!!』

「……あ、」








私の兜がまた取られた。
何か前にも同じ様なことがあった気がするが……。






「何か八重が被ると……」

『何』

「いや、何も無いっス……(可愛いなんて思った俺は末期だな……)」







**

「で、何でまた被ってるの」

『ダメなの？』

「ダメでは……って、僕が答えても意味無いよね」

『三成と左近貸して』

「何でまた……」

『魔王討伐』

「急過ぎないかい？」

『あれ、逆に好都合なんじゃ無いの？ 早々に魔王が居なくなって後は秀吉さんの思うが儘にやれば良いんだから』

「まぁ、八重君の言ってることにも一理あるけど」

『因みに魔王を討伐するのは勝家だよ』

「八重君のやりたいことが何と無く分かって来たよ」

『主じゃないのにね』

「八重君の主は帰って来ないみたいだけど」

『放浪癖があるからね(でも、彼奴らの足止め役にはなってくれるかな？)』

「放浪癖があるのは慶次君でしょ」

『其れもそうか』






よく自分の主に言いたい放題出来るよね。
其れで苛つかない彼も不思議だけれど。






「三成君、左近君。八重君からの指名だから宜しく頼むよ」

「八重から？ ……分かりました」

『三成ィィ!!』

「ば、八重、貴様……私の腰に抱き付くな!!」

「仲良いね」

「は、半兵衛様……申し訳ありません」






可愛い。
なんて言ったら恐煌が来そうだから止めておこう。

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