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“朋”って何?
“友”なら分かるけど。
“朋”は分からない。
“友達”ってことなの?
『松永様、此れ、何処に向かってんの?』
「朱黒館だが……」
『其処って確か二条御所なんて呼ばれて無かったっけ?』
「いやはや、卿は物知りだな」
『ってか物知りも何も知ってて当然じゃね?』
「帝に会いに行こうと思ったのだが……」
『帝って……将軍!?』
マジかよ……。
私の命、大丈夫かな……。
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「帝、」
「おお、久秀」
「卿に紹介しようと思ってn『此処が朱黒館!? 広くね!?』……八重、私の台詞を遮らないでくれないか?」
『すまんな』
「……」
「久秀、彼女は?」
「八重。私の直属の忍だよ」
『兼軍師』
「私の直属の忍であり軍師だ」
「久秀に風の朋以外にも居たのだな」
「……彼女は風魔と違って特別なのだよ」
「そうか、そうか」
『ならば、将軍。私のお願いを聞いてくれますか?』
「ふむ、願いか」
『安芸に居る親友一名と豊臣に居る親友一名に手を出さないでくれます?』
「ははっ! 朋に朋か。承知した」
『え』
「言った本人である卿が何故驚いているのかは知らないが、帝は卿の言った願いとやらに了承したそうだ……」
『そ、そうなの? ……あ、ありがと……』
「可愛らしい朋だ! そんな朋に予からも願いというのがあるのだが、」
『え、何?』
「朋は“怪王”を御存知かな?」
『え、何其の物騒な渾名。あ、間違えた。物騒なのは魔王だった』
「其の“怪王”が魔の朋に挑んだ」
『魔の朋……魔王か。テラすげぇ……で、結果どうなったの?』
「其の“怪王”否、怪の朋は魔の朋に返り討ちにあった」
『そう、残念。でも挑んだのは度胸ある。其の“怪王”だっけ? どうしたの、魔王に殺されたの?』
「否、まだ生きている」
『良かったじゃん』
「だが、地位は下がった」
『でしょうね。仕えてる主に挑んだってことは謀反を企んだ。でも殺されずに地位だけ下がってまだ生きているだけでもスゴいと思うし』
「其処でだ、朋に其の怪の朋をお願いしたいのだ」
『つまり好きにしろと?』
「期待しているぞ、朋よ!」
そんな、私に期待されても困るのだが。
結局、“朋”とは一体なんだったのか。
未だに分からない。
もう、考えるの止めようかな。
「卿は何処に行くのかね?」
『将軍が言った“怪王”サンのところ。誰のこと言ってんのか分かんないし。でも、魔の朋……魔王が話に出たことを考えると織田の一味とみて間違いないから』
「ほう。……八重、やはり卿は軍師にも向いているようだな」
『だから“忍兼軍師”なんだってば』
「まぁ精々、頑張ると良い」
『松永様から“頑張る”とか嫌な予感しかない』
「……」
“怪王”サンがどんな人物だか気になって仕方無い。
将軍が好きにしろと言うのなら其の“怪王”サンを私の仲間にしようか。
時間が掛かりそうだけど。
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