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『見て見て、似合うっしょ?』
「…………」
どうして、こうなった。
数時間前……
『勝家、戦うとき以外は兜取れば?』
「……しかし、」
『えいッ!!』
「あ……」
其処までは良かった。
まさか、自分が取る前に八重に取られるとは思わなかったが。
なのに、どうして被った。
どうしたらそうなるんだ。
そして彼女が振り向いて、冒頭に至る。
私の兜を被った彼女は笑顔で振り向く。
可愛い……。
笑顔ごと彼女を守りたい衝動に課せられる。
そしてそんな彼女に近付き彼女と同じ視線になる。
兜をひょいっ、と取れば拗ねる彼女が愛しい。
『ちょっと……っ!!』
「此れは私のだ」
『そうだけ、ど……っ!?』
彼女の額に唇を落とした。
そして兜を彼女に再び被らせれば彼女は顔を真っ赤にしながら私の手を引いた。
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『ってことです。松永様』
「……私が居ない間に何があったのかは知らないが、何故だ……内容が全く頭に入らないよ」
『すまんな』
「謝る気無いでしょ、八重くん」
『あははー』
「「……」」
「……して卿は、帝が言っていた……」
「……柴田勝家でs『私の大切な人』……八重様!?」
「ほう、忍であるにも関わらず其のような感情があるとは……」
『忍だって人間だよ』
「そのようだな。八重、卿が其のように笑うのは私は初めて見る」
「勝家くんが気に入ったんだね」
『気に入ったというか、異性として好いて居るんだけどね』
「「……」」
「っ、八重、様……」
『で、良いでしょ。松永様』
「はは、八重の好きにしたまえ」
『やったあ!!』
恐らくあの兜は勝家くんのだろうけど、どうして彼女が被って居るんだろうね。
気になって仕方無いから聞いてみた。
「其の兜は……」
『貰った』
「……」
『嘘だよ。でも、似合うでしょ?』
笑った。
初めて見ると言っていた彼女の主でさえ何故か微笑ましく見てる。
保護者か。
でも似合っては居る。
「で、二人は此れからどうするつもりだい?」
『私は勝家と一緒に甘味巡りを』
「……ふむ、ならば私は風魔と共に珍しい茶器でも見てくるとしよう」
コイツら……ッ!!
『でもね、甘味巡りの前に安芸に行こうと思って』
「安芸。……元就くんのところかい?」
『うん。たまにでも会っておかないと元就、泣いちゃうから』
「あの元就くんが泣く!?」
『見たこと無いけどね。でも拗ねたとこは見たことある』
「元就くんにそんな一面が……」
『お土産買ってくるよ』
「楽しみに待っているよ」
「……では私は、」
『茶器なら要りませんよ』
「……」
「八重様、」
『ん?』
「……今日はどうなさいますか」
『今日は疲れたから寝る。行こう?』
「はい」
客間に戻る。
其の客間が絢爛豪華だったのは言うまでも無い。