どれくらい走ったのだろう。
かなり走った気がする。
不登校からか元々、運動はあまり得意な方では無い。
勉強は良い方だけど。
そして生憎、スーツは家だ。
着てくれば良かったなんて、彼奴に会った時に思っても遅い。
走ってる道中、玄野達に会った。
視線が合ったけど逃げる方に集中した。
“助けて”とはメールしたけど、玄野以外の二人が来るなんてそんなことは無いだろう。
曲がり角を利用して走ったのだが、目の前は行き止まりだった。
「音無」
「はは、残念だね。音無ちゃん」
『くっそ……』
其れでも逃げようとしたけど、捕まった。
「簡単に逃げられると思うなよ、音無」
「そーそー。此方は3人なんだから」
『離して……』
「誰が離すかよ」
彼奴は私の頸に噛み付いた。
まるで“俺の物”とでも言うように其処に紅い斑点が付いた。
俗に言う、キスマーク。
『嫌だ、嫌だ……』
「怯えちゃってるの? 可愛いね、音無ちゃん」
「何してんだ?」
『………玄野と……和泉?』
突然の乱入者――――……玄野と和泉が其処に居た。
有り得ない。
玄野なら兎も角、和泉が居ることが想定外だった。
「誰だ、お前ら」
玄野と和泉の乱入のお陰で私は彼奴から逃れた。
其れと同時に透明な“何か”に引っ張られた。
『(な、何!?)』
「(朔夜は此方)」
聞いたことのある声に助けられた。
曲がり角付近の誰にも分からない位置まで連れて来られてステルス機能を解くとやはり聞いたことのある声の人物は見知った人物だった。
『西……』
「朔夜……」
ツーッ、と頸筋をなぞられる。
ゾクリッと悪寒が疾しる。
頸筋には先程、彼奴に付けられた痕がある。
其処を重点的に攻められる。
『………ッ』
「朔夜、」
応える間もなく頸筋をペロリと舐められた。
そして今度は彼奴に付けられた痕と同じ所をかぷりッ、と噛み付かれる。
再度、痕を舐める。
まるで消毒のような、そんな感じ。
ピチャリと水音が耳に聞こえる。
なんか、エロいのは気のせい……ではないな。
『は……ぁ、』
「……続きはお前ン家でしても良いけど?」
『う、うん』
「玄野、いつまでやッてンだよ。もう朔夜は救出出来たけど?」
「音無、大丈夫か!?」
『え、あ、うん。大丈夫、有り難う』
なンもしてない癖に玄野のヤツが朔夜の頭を撫でた。
イラつく。
テメェは彼女とか居ンじゃ無かったのかよ。
「な、いつの間に!!」
「音無、お前はまた裏切るのか……?」
『別にアンタの事なんて好きじゃない』
「つーか、どーでも良いんだけど。アンタと朔夜の関係なンか興味ねェし。抑、朔夜は俺のモンだし」
「は? 何言ってんだよ、お前」
「ウッセェ。和泉も帰れよ」
「……」
和泉は私を一瞥して立ち去って行った。
彼奴も私の奪われた物を持った儘、私の前から居なくなっていた。
「いつから音無と!?」
「あァ? さッき」
「はぁ? なんだよ、其れ」
ムカつく。
音無と居る回数は少なくとも俺の方が多いのに。
お前と音無が会ったのはガンツのミッション時だけじゃねぇかよ。
俺も音無も死ななければ良かったなぁなんて思う。
今更だけど。
多恵ちゃん居るけど、音無が気になってしょうがない←
「なンだよ」
「西、お前には負けない」
「ハァ? ………まさか、」
玄野に負けない言われた。
馬鹿じゃねーの!?
彼女居るくせにふざけてンのか?
絶対に渡すものか。
俺は朔夜が……