15.二日目[2]
『ハァ…』
部活が終わり、帰宅の時間。
私は一人で疲れきっていた。
と言うか、目の前の山を見れば自然にそうなる。
今日はたまたま自転車で通学したことに、救われました。
今日は自転車で行こうと誘ってくれた雪兎に心の中で感謝。
まあ、私がこんなことになってる原因は、数十分前に遡る。
*****
部活が終わり、片付けをしていた私。
すると突然、背後から声がかかった。
振り返って見てみると、マネージャーテストの残り二人。
名前は忘れてしまったけれど、確か二人共三年生で仲が良いらしく。
部活中は…まあ、言うまでもない。
『何ですか?』
「あたし達、これから用事があってさぁ」
「悪いんだけど、タオル洗い全部お願いね〜」
『え…』
思わず声を漏らすと、キッと睨まれる。
怖いです、はい。
まあ、用事があるなら仕方ないよね。
『わかりました』
「ほんと〜?」
「ありがとねー」
有無を言わせず先輩達はそのまま去っていった。
*****
『こんなにあるとは…』
アッサリokしてしまった先程の自分が恨めしい。
因みに、昨日の分は私と二人の内一人の先輩が当番。
三日間で三人居るし、丁度いいからとそうしたのだ。
『二倍以上ある気がするんだけど…』
「当たり前じゃん」
『っひゃ……ぁ、リョーマ君』
驚かさないでよと心の中で呟く。
この暗さでいきなり背後とか、心臓に悪いよ。
「先輩ってさ、バカ?」
グサッ
あ、リョーマ君の言葉が今突き刺さった。
毒舌って言われませんか?
「それ、昨日あんたが持って帰って洗った分の三倍あるよ」
『そっかぁ…ぇ、三倍!?』
え、だって昨日はわけて持って帰ったわけで……あれ?
そう言えば今日、半分くらい足りなくて、予備のを……
『まさか…』
「そ。昨日、琉那先輩以外タオル持って帰ってないっスよ」
『……ハァ…』
もう何ですか。
部活中の仕事やってくれてないんだから、タオル洗いくらいやってくださいよ。
「……琉那先輩って、お人好しっスね」
『褒められてるの、これ?』
「半々っスね」
『…そうですか』
もう一度溜め息を漏らし、自転車の鍵を開ける。
雪兎がこれ見たら、うるさそうだなぁ…なんて思っていると、ヒョイッと横から荷物を引ったくられた。
『…引ったくりは犯罪ですよ、リョーマ君』
「…引ったくりじゃないっスよ」
少しムスッとしてる犯人……リョーマ君は、ちょっと可愛いかな。
男の子に可愛いは失礼だと思うけどね。
「──送る」
『え?』
「家まで送るって言ったんスよ」
先輩、ドジだから。
いつもの生意気な表情に戻ったリョーマ君。
今の私のときめき返してください。
…一瞬だけど。
*****
『──と言うか、家反対側じゃ…』
「…今日は遠回りしたい気分なんで」
『そうなの?気まぐれだねぇ、リョーマ君』
猫みたい。
ふにゃりと安心仕切った笑みを浮かべる琉那先輩。
この人が天然で良かった。
普通疑うし。
…まぁ、だからこそマネージャーテスト受けてる残り二人に、良いように使われてるんだろうけど。
『でも、あんまり遅くなっちゃ駄目だよ?お家の人心配するだろうし、男の子でも危ないんだから』
──天然だけど、この人は優しい。
よく気が利くし、手際も良い。
でも、この人がマネージャーやってくれるのは、明日まで。
後は多分、この人は合格するだろうから、合宿もやってくれるだろうけど…。
柄にもなく、もう少し一緒にいたいと思ってしまった。
だがらわざわざ、待ち伏せまでしたのにね。
それにすら気づかないなんて、自分のことに関してはてんで鈍い。
「クスッ…」
─────まだまだだね
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