14.二日目[1]

『菊丸先輩…』

「にゃはは…」





二日目、金曜日。

眉根をよせて菊丸先輩を見据える私。
苦笑しながら私を見上げる菊丸先輩。

さて、どうしてこうなったのか。
ことの始まりは、菊丸先輩にある。

私と菊丸先輩が初めて出逢ったのは、保健室。
あの時も、無茶をして手首を怪我していた。

そしてあの時私は、
"無茶はしないでくださいね"
そう忠告した筈だった。
しかし、それにも関わらず菊丸先輩は無茶をして、また手首を捻ってしまっていた。

つまり私は、菊丸先輩が無茶をしたことに怒っているのだ。





『選手<プレーヤー>なんですから、もっと自分の体を大事にしてください』

「…」

『……練習で頑張ることは、大切です。練習から手を抜いたりしていたら、上手くなんて絶対になれませんしね』

「じゃ、じゃぁ…!」

『けど、無茶をすることは違うと思います』

「!」

『無茶して、怪我して。それで試合ができなくなったら?テニスができなくなったら?元も子もないじゃないですか。私は、菊丸先輩にそうなって欲しくないんです』





真剣な瞳で見詰めると、菊丸先輩は目を丸くして驚いた。
そしてすぐに、何で…と口を動かした。





「何で、水神さんは其処までしてくれるんだにゃ?」





ボトルだって…
そう呟くように付け足す菊丸先輩。
私は目尻を下げ、口元を緩ませた。





『マネージャーですから』

「え?」

『テスト三日間と、合宿のしかやる予定はないですけど、それでもその間はテニス部のマネージャーです。選手を支えるのが仕事なんですから、当たり前ですよ。

───あ、もう休憩の時間!!私、急いでタオル運んで来ます!!』





菊丸先輩に、絶対安静ですよと忠告し、タオルを出すために駆け出した。

だから私は知らない。
この時、菊丸先輩の頬が赤かったなんて。

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