11.マネージャー[1]

「駄目ったら駄目!!」

「お前が決めちゃいけねーなぁ、いけねーよ」

『ま、まぁまぁ…落ち着いて?』





はい、只今桃と未香が喧嘩中です。

原因は、桃の一言と私。
どうやら一ヶ月後に一週間の合宿があるらしく、青学も呼ばれたらしい。
他に来るのは、立海大付属高校、氷帝学園、四天宝寺高校。
つまり、青学も入れて四校。
場所も日付も問題なし。
けれどこの合宿には、一つだけ欠点があった。

"マネージャーがいない"

二人くらいは青学から、手伝ってくれそうなコが居るらしいのだが、それでもせめて後一人は欲しいらしい。
その一人を桃が私に頼んだところ、未香が猛反対。

理由は…、





「琉那がファンクラブに目を付けられたらどうするのよ!!」





マネージャーにはテストがあるらしい。

其方の心配はないんですか、未香さん。





「せめてテストだけでも…」

「駄目よ!!琉那じゃ絶対受かっちゃうじゃない!!」

「チッ…、やっぱ通じねーか…」

「当たり前!!」





ちょっと待て、それだと私が絶対受かるみたいだよ。
受からないよ絶対。
無理無理。





「なぁ、頼むよ琉那…な?」

『うーん…、私は別に構わないけど…』

「よっしゃ!!」

「チィッ」

『でも』

「「?」」

『雪兎が何て言うかなぁ…』





*****


「絶対駄目」

「即答!?」

『ははは…』

「よし!!」





早速隣の教室に行き、訊いた私達。
けれど、帰ってきた言葉はやっぱり反対の言葉。





「テニス部は色々危険だから」

「は?」

「僕がいないのに、琉那を一週間も男だらけの合宿に参加させる?冗談じゃない」





え、何か悪いことでもあるの、雪兎?

そんな表情で見つめていたからか、目があった瞬間に溜め息を吐かれた。

酷い。





「お前、シスコンだなぁ…」

「そりゃどうも」

「褒めてねぇよ」





目線で火花を散らす二人。
琉那は困った様子でそれを見た後、声を掛ける。





『ちょっと…』

「何してんだよ、てめーら」





どこかで聞いたことがあるような声が聞こえ、其方を振り向く。
するとそこには、バンダナを巻いていない、制服姿の海堂君がいた。





『あ、海堂君』

「あれ、知ってるの?」

『うん、この前話したんだ』

「そう」

「どうでもいいが…何してんだよ」

「お前も手伝えよ。合宿のマネージャーの件、琉那にやってほしいんだけど、雪兎が許可してくれなくてよー」

「……それぐらい自分でやれ」

「あ?できねーから頼んでんだろー!!」

「それが人にものを頼む態度か!!」

「お前にだって関係するだろーが!!」

『えー…と…』





何故か喧嘩を始めてしまった二人。
雪兎と未香は止めようとする姿勢はなく、呆れかえっている。
どうしようもできないなと、一人苦笑を漏らしていると、後ろから肩を叩かれた。





『?…あ!大石先輩、不二先輩、菊丸先輩!それに…治兄に、隆兄も!!」

「「「は?」」」





振り返って見てみると、最近知り合って、何回か会ったりした先輩方。
それに、私の…私と雪兎のよく知る、治兄と隆兄がいた。
二人に久しぶりだねと言えば、微笑んで頭を撫でてくれた。





「ちょ、待て琉那。テニス部には気をつけろって言ったのに…。その上、治兄と隆兄って何?」





私の双肩を掴んで前後に揺らす未香。

酔っちゃう、酔っちゃう!
私、三半規管弱いんだよー!!

私の必死な思いが通じたのか、「あ、ごめん」と言って離してくれた。
雪兎が大丈夫?と言って頭を撫でてくれる。

あ、優しい。





『治兄は従兄の幼なじみだから、隆兄はお父さん同士が仲良しだったから、昔から知ってるの』

「へぇ…」

「クスッ、隆さんはいなかったけど、乾はいたよね?」





何で教えてくれなかったの?
そう訊く不二先輩の笑顔は、目が笑ってなく恐ろしかった。





「いや、言わないほうが面白いデータが取れると思ってな…」

「そう…」





今、不二先輩の周りだけ温度が低くなった気がするのは、私の気のせいでしょうか。





『そ、そうだ!大石先輩、何故皆さんここに?部活始まっちゃうんじゃ…』





あれ?
そう言えば、不二先輩って何部?
手塚先輩と大石先輩、菊丸先輩、治兄と隆兄がテニス部でしょ?
もしかして、不二先輩も?





「クスッ、僕もテニス部だよ」





言ってなかったのは僕だけだった?
そう訊ねてくる不二先輩は、読心術でも使えるのではないでしょうか。





「ちょっと話がズレたね。俺達は君に頼みに来たんだ」

『?』

「あ、嫌な予感」
「あたしも」





口々に言う二人を一瞥し、大石先輩の言葉を待つ。
そして、言い放たれた言葉に私は耳を疑った。








「──俺達の、臨時マネージャーやってくれないか?」

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