07.生徒会長

「じゃあ僕は部活行くから、気をつけて帰るんだよ」

『うん。野球頑張って』





あれから一週間。
学校生活にも大分慣れ、雪兎は野球部に入部した。
私は帰宅部だけど。

去っていく雪兎を見送り、自分も帰路につこうと歩き出す。





「水神さーん」

『?…村野先生、どうかしましたか?』





声を掛けられ振り返ると、資料を持った村野先生が。





「ごめんなさい。私今から大事な会議があって…。これ、運ぶの頼まれてくれない?」





そう言う先生は、本当に困ってるよう。
帰宅部の私は特に断る理由もないため、頷いてそれを受け取った。

あ、結構重い。





「助かるわぁ。ありがとう」

『いえ、気にしないでください。会議頑張ってくださいね』

「ありがとう!!あ、それは生徒会室にお願いね」

『はい』





野村先生は行ってくるわね、と言って駆け出す。
私はそれを見送り、歩き出す。
生徒会室は何回も教えてもらったから、方向音痴の私も大丈夫。
けどこれ、結構重い。
運ぶの時間かかりそうだなぁ…。





『……あれ?』





いきなり軽くなった書類。
目の前も、さっきより開けてる。
驚いて周りを見れば、男の人が立っていた。





「あぁ、ごめんね。重そうだったから」





申し訳無さそうに言った彼は、優しそうな印象があった。





『いえ、少し驚いただけですから。ありがとうございます』





ニコリと笑えば、男の人は顔を赤らめた。
あれ、熱中症?
今日ってそんなに暑かったかな?

そんなことを思っていると、男の人は咳払いをした。





「俺は三年の大石秀一郎。君は?」

『私は二年の水神琉那です。この間転入してきました』

「へぇ、君が転入生なんだね」

『はい』

「あ、これどこに運べばいいのかな?」

『え?』

「手伝うよ」

『え、いえそんな、申し訳無いですよ!!』

「いいよ、気にしないで。部活までまだ時間あるし」

『あ…じゃあ、お願いします』





生徒会室までです。
と付け足せば、わかったよと微笑んでくれた。

それから暫く話ながら歩くと、あっと言う間に生徒会室に着いてしまった。
どうやら大石先輩は、テニス部の副部長らしい。
未香の話通りだ。



コンコンコン


『失礼します』





ドアを開けて入ると、眼鏡を掛けた先生がいた。





「何だ」

『あ、すみません、資料を届けにきました』

「…そうか」

「あ…」

『先生は何を?』

「「…は?」」

「へ?」





え、何?
先生って言ったら、大石先輩と先生は目を丸くした。





「…水神さん、手塚は三年だよ」

『へ?』

「…」

『…っ、ごごご、ごめんなさい!!』





資料を持ったまま、全力で頭を下げて謝罪する。

私、この上ないくらい失礼なことを…!!





「いや、構わない。気にするな」

「ははは…」

『本当にごめんなさい…』

「……それはいい。それより、資料、重くないのか?」

『え?あ…』





手塚先輩の視線の先には、私の資料。
大石先輩を見れば、彼は既に資料を置いていた。
私もその隣りに資料を置き、大石先輩に軽く頭を下げる。





『資料、手伝ってくださってありがとうございました』

「いや、気にしないで」

『手塚先輩も』

「「?」」

『お気遣い、ありがとうございます。それでは私はこれで』





部活頑張ってくださいね、とだけ告げ、生徒会室のドアを開けた。





『あ、そう言えば手塚先輩』

「…何だ?」

『手首、ちゃんと冷やした方が良いですよ。腫れてます』

「「!」」

『では』





ニコリと笑い、今度こそ私は生徒会室を出た。





*****


重たそうな資料を持ったコにあった。
半分持って上げると、慌てた彼女に申し訳ないと言われてしまった。
それでも気にしないでと言い続ければ、彼女はお願いしますと告げた。

話しながら歩いていると、彼女は噂の転入生だと言うことがわかった。
そして、他の女の子達とはどこか違うということも。
性格もだけれど、何というか…佇まいとかが綺麗だ。





「…大石、あいつは何者だ」

「え、ああ…。水神琉那さん。転入生だよ。俺もさっき会ったばかりで、よく知らないんだ」

「…そうか」





そして何より驚いたのは、手塚の怪我を見抜いたこと。
手塚自身もかなり驚いているらしく、彼女に興味をもったらしい。

それに、少し…気に入ってる、かな?
まあ、俺も人のこと言えないけど。

あぁ、手塚のことを先生って言ったのは、驚いたなぁ…。

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