06.放課後

「やっと終わったぜ…」

「部活あるんでしょ?早く行かなくていいの?」

「あぁ!!早く行かねーと」





じゃあな、と言って駆けていった桃を見送り、未香に視線を移す。





『何の部活なの?』

「あれ、言わなかった?桃はテニス部」





因みに私は剣道部。
そう言う未香に、へぇと頷く。

テニス部じゃ、伯父さんが顧問をやってる部活と同じだなぁ。





「あ、でもテニス部には気をつけて」

『え、何で?』

「美形揃いだから、ファンクラブあんのよ。過激なのが多いから」





あたしは全く興味無いんだけどね。
なんて笑う未香にそっか、と言う。





『じゃあ、未香も気をつけてね』

「え?」

『だって、興味なくても何が起こるかわかんないし。心配だよ』

「!」





目を大きく見開く未香。

あれ、私何か変なこと言った?





「クスッ…ありがとう、琉那」





未香は私の頭を優しく撫でた後、部活行ってくると笑って、教室を出て行った。





『さて、私も帰らないと…』

「琉那ー」

『あ、雪兎』





帰るよ。
そう言った雪兎に頷いて、並んで歩く。





「水神ー」

「『?』」

「おお、すまない。弟の方だ」





振り返ると、三上先生がいた。
どうやら、資料を書かなくてはいけないらしい。
私は休み時間に未香に手伝ってもらって、書き終わった奴だ。





『じゃあ私、外で待ってるよ』

「うん、わかった」





雪兎は三上先生の後をついて行き、私は外へ向かった。





*****


『あれー?』





どうしよう、また迷子になっちゃった。
リョーマ君に見つかったら、絶対馬鹿にされるなぁ。





「クスッ、どうかした?」

『ひゃいっ』





いきなり背後から話しかけられて振り返ると、綺麗な男の人が立っていた。





「クスッ…、面白い反応だね」

『い、今のは忘れてください!!』





慌てて叫ぶと、その人はまた笑った。

うぅ…、そんなに笑わなくたっていいのに…!!





『ところで…あなたは?』





この雰囲気をどうにかしようと名前を訊ねると、彼は目を見開いて驚いた。





「僕のこと、知らないの?」





え、何だこの人。
有名人か何か?





『すいません、私転入生でして…』

「あぁ…そうなんだ」





僕は不二周助だよ。
そう言った不二さんに、自分も名乗る。





「琉那ちゃんて呼んで良いかな?」

『あ、はい』

「そう言えば…琉那ちゃんはこんなとこでどうしたの?」

『え、えっと、その…』

「…もしかして、迷子?」

『!』





クスクスと再び笑い出す不二さん。
り、リョーマ君と良い勝負の意地悪さですよ。





「どこに行きたいの?」

『え?』

「笑わせてくれたお礼。案内するよ」





これは、親切なんでしょうか、意地悪なんでしょうか?





『あ、ありがとうございます。外までお願いします』

「わかったよ。こっち、着いてきて」

『は、はい!!』





*****


あれから暫く。
色々話していると、昇降口に出た。
それから呼び方は、不二さんじゃなく不二先輩に。

あまり変わらないけど…。





『ありがとうございました』

「気にしないで。じゃあ僕はこれで」

『あ、待ってください!!』

「ん?」

『これ…』





立ち止まって振り返る不二先輩に、絆創膏を渡す。
不二先輩が目を丸くして、これはと訊ねるので、私は口を開いて言った。





『絆創膏です。不二先輩、指怪我してますよ』

「え?…あ、本当だ」





不二先輩の右手の指には、切れた痕と、血。
不二先輩は私から絆創膏を受け取り、ありがとうと笑う。





『いえ、こちらこそ。不二先輩の指、綺麗ですね』

「え?」

『大切にしてくださいね。では』





ニッコリと笑い、私は校門まで向かった。





*****


面白いコに会った。
水神琉那ちゃん。
朝話してた、双子の転入生の片割れ。

今まで女子なんて、初対面だろうとお構いなしに、僕達に媚びを売ってきた。
けど、あのコは違った。
真っすぐ、僕の目を見てきた。

そこまで考えて、ふと自分の右手を見る。
指には、彼女がくれた花柄の絆創膏。

本人の僕すら気づいてなかったのに、よく気が利くコだなぁ。

それに……



"不二先輩の指、綺麗ですね"

"大切にしてくださいね"





「クスッ」





まさか、見惚れるとは思わなかったな。

あの笑顔が、頭から離れなかった。

[ 11/36 ]


back
しおりを挟む



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -