04.転入[4]
「ここっスよ」
『あ、本当だ!!ありがとうリョーマ君!!』
「別に…」
笑顔でお礼を言えば、またそっぽを向いてしまったリョーマ君。
何だって言うんだ。
「もう迷子にならないでくださいね」
悪戯っぽい笑みを浮かべるリョーマ君に、ムスッとすると彼はクスリと笑った。
「じゃあね、琉那先輩」
『あ、うん。またね』
去っていくリョーマ君の背中を見送った後、私は職員室のドアを開けた。
「琉那!!」
『あ、雪兎』
「大丈夫?!」
『うん、大丈夫。心配かけてごめんね』
職員室に入るなり駆け寄ってきた雪兎。
心配かけちゃったなぁと、苦笑した。
「あなたが琉那さんね?」
『はい。遅れてすみません』
「いいのよ。ここ広いから、迷っちゃうのも仕方ないわ」
ニッコリ笑った先生は、30代くらいの女の先生。
隣には、それより少し年配の男の先生がいた。
「私があなたの担任の、村野です。宜しくね」
「因みに俺は、雪兎君の担任の三上だ。宜しく」
『宜しくお願いします』
軽く頭を下げると、チャイムが鳴った。
どうやら予鈴らしい。
「それじゃあ行きましょうか」
村野先生と三上先生が立ち上がり、職員室を出る。
私達も、それを追って職員室を後にした。
*****
ああ、どうしよう。
緊張してきた。
あれから、それぞれの教室に着くと私達は分かれた。
と言ってもすぐ隣。
けれど、雪兎は既に教室に入ってしまったため。
今廊下にいるのは、私だけだ。
「水神さん、どうぞ」
『あ、はい!!』
村野先生に言われた通り、ドアを開けて中に入る。
沢山の好奇の目にさらされ、緊張が増す。
『今日からここに通うことになりました。水神琉那です。宜しくお願いします』
ペコリと頭を下げれば、拍手が挙がった。
良かった。
これで一安心。
「えーとそれじゃあ水神さんの席は…、桃城君の隣が空いてるわね。桃城君、手を挙げてー」
村野先生が言うが、どこからも手が挙がらない。
もしかして、私が隣じゃ嫌だとか…?
「先生、桃ならまだ来てないですよー」
「あら、また遅刻ー?遅刻好きねえ」
何だ、遅刻か…。
喜んじゃダメだけど、ちょっとホッとする。
「桃城君がいないなら、永峰さんの後ろって言った方が良いわね。永峰さん、手を挙げてくれる?」
先生がそう言うと、さっき桃城君がいないと言っていた女の子が手を挙げた。
窓際の列の、後ろから二番目。
そちらを向くと、女の子はニコリと笑ってくれた。
「じゃあ、あの子の後ろに行ってくれる?」
『はい』
ガラッ
「「「『!』」」」
「くっそー、間に合わなかった…」
突然ドアが開き、息を切らした男の子が入ってきた。
もしかして、この人が桃城君?
「桃城君遅いわよ!!遅刻何回目かしら?」
「す、すんません!!
……ん?えーと、転入生」
『あ、うん。水神琉那です。宜しくね』
「俺は桃城武!!宜しくな!!」
「ははは、桃城!!遅刻してきたのに一番に自己紹介かよ!!」
「ずりー!!」
「へへっ、いいだろ!!」
何て会話を聞くと、桃城君はクラスの人達と仲が良いんだなとわかった。
「全然良くありません!!ほら、水神さんが困ってるでしょ?水神さん、席に座っちゃって平気よ」
『あ、はい』
先生に言われ、女の子の後ろの席に向かい、座った。
すると、女の子がこちらを向いて話しかけてくれた。
「あたし、永峰未香。宜しくね。未香って呼んで?私も琉那って呼ぶから」
『うん。宜しくね、未香!!』
嬉しくなって笑みを浮かべると、未香は一瞬目を丸くし、微笑んだ。
「(男共が見たらイチコロだね)」
転入初日、友達ができた。
因みに、桃城君は暫く公開お説教でした。
その間に私達は話をして、更に仲良くなった。
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