03.転入[3]

『ここ、どこだろう?』





張り切って青学に来た私達。
けれど、あちこち見ていたら、雪兎と離れてしまった。
私は方向音痴のため、つまり今は…





『ま、迷子…』





水神琉那、高二、迷子になりました。

とりあえず、雪兎を見つけるか、職員室を見つけるかしないと…。

そんなことを思いながら歩いていた矢先、



ドンッ


『きゃっ』
「わっ」





誰かとぶつかってしまった。
転けると思ったけれど、どうやらぶつかってしまった人が腕をつかんでくれたようで、そうはならなかった。





「あんた、大丈夫?」

『は、はい!!』

「…!」

『…?』





顔を上げて笑顔で返事をすると、何故か固まってしまった。
目の前の人は、青学の男子生徒らしい。
綺麗な顔立ちで、雪兎と同じ制服を着ていた。





『あ、あの…』

「!…あんた、名前は?俺、一年の越前リョーマ」

『え、あ、私は二年の水神琉那。今日転入してきたの』

「先輩だったんスね。
(転入…どうりで見たことないわけね)」

『ところで越前君…』

「?」

『し、職員室ってどこかな?』

「は?」





訊ねると、目を丸くして驚く越前君。

恥ずかしい!!
バカだって思われたかな?





「先輩、もしかしなくても迷子?」

『ぅ、うん…』





恥ずかしさのあまり、顔が熱くなる。
消え入りそうな声で頷くと、越前君は目を大きくして驚いた後、笑い出した。





『わ、笑わなくたって…!!』

「だって、高二で迷子って…」

『うぅ…、越前君酷い』





尚も笑い続ける越前君を睨んでやれば、彼はそっぽを向いてしまった。

今度は何だ。

そんなことを心の中で呟くと、越前君が口を開いた。





「案内するよ」

『へ?』

「案内。道、わかんないんスよね?」

『う、うん』





これは一体、どういった風の吹き回しだろうか。

少し疑ってると、越前君はクスリと笑った。





「別に何もないっスよ」

『あ、ありがとう越前君』

「リョーマ」

『え?』

「リョーマって呼んで」





俺も琉那先輩って呼ぶから。
そう言った越前君に、嬉しくなって笑う。





『ありがとう、リョーマ君!!』

「!…さっさと行くよ」





そう言って、またそっぽを向いてしまったリョーマ君。
スタスタと歩く後ろ姿を、私は慌てて追いかけた。





「(あんな笑顔、反則でしょ…)」





だから、この時リョーマ君の顔や耳が赤かったことは、知らない。

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