02.転入[2]
「おい海堂」
「あ?」
「今日、俺のクラスに転入生が来るらしいぜ」
「お前もか。俺のクラスもだ」
「なになに?何の話ー?」
ある朝。
朝練が終わった後、珍しく喧嘩をせずに会話していた桃城と海堂。
その間に、菊丸が割って入る。
「今日、転入生が来るらしいんスよ」
俺のとこと海堂のとこに。
そう言おうとした桃城だったが、それより先に、いつの間にか傍まで来ていた乾が口を開いた。
「俺のデータによると、桃城のクラスには女子。海堂のクラスには男子が来るらしい。因みに、双子の姉弟だな」
「双子?随分と面白そうだね」
「不二先輩!!」
クスリと笑った不二は、一体いつから居たのだろうか。
「何の話をしてるんだ?」
「二人が喧嘩してないなんて、珍しいね」
大石と河村まで加わり、最早少し異様な光景となっていた。
レギュラーでいないのは、後は越前と手塚のみである。
「お前達、何をしている」
「手塚」
噂をすればなんとやら。
手塚までもが現れ、青学レギュラーが一名を除き勢揃いだ。
女子なら、黄色い声を上げずには居られない光景だろう。
「今日、桃と海堂のクラスに、転入生が来るらしいんだにゃ〜」
「へぇ…!!」
再び盛り上がる彼らに、手塚は溜め息を漏らした。
「早く教室に行け。遅刻するぞ」
手塚に言われ時計を見れば、既に二分前。
慌てて教室へ駆け出す。
鶴の一声ならぬ、手塚の一声である。
「そう言えば、越前は?!」
「越前なら、とっくに教室へ向かった」
「なっ、あんにゃろー!!」
先輩を置いて先に行くなんて、後で懲らしめてやる。
そんなことを密かに心に決めた桃城だった。
*****
「ふぁ〜あ」
時間は少し戻り、越前は欠伸を漏らしながら教室へ向かっていた。
「(ねむ…)」
特にいつもと変わらない。
だが、この日だけは特別だったのだ。
ドンッ
『きゃっ』
「わっ」
前をよく見ていなかった越前は、横から走ってきた少女とぶつかってしまい、慌てて少女の腕を掴んで転ばないよう支えた。
「(腕細…)
あんた、大丈夫?」
『は、はい!!』
「…!」
少女が顔を上げた瞬間、越前の思考は停止した。
これが、双子とテニス部達の物語の始まりだとは、まだ誰も知らない。
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