ウォータイムが始まる前、サガラはハルキに呼ばれた。昨日のウォータイムのことだろうと予想できた。ただでさえアラタやヒカルが命令を聞かなくてハルキは苦労しているのだ。更に苦労させてしまった。
怒られてしまうのも仕方がない。だが、頭を冷やさして貰えることにもなる。命令を聞かなかった理由はどうしようかと考えていた。
「サガラ、どうして昨日のミッションで命令を聞かなかったんだ」
「す、すいませんっス…」
「サガラらしくないよ」
サクヤにらしくないと言われ、サガラも自分らしくないなと思っていた。冷静で無かったらロストするに決まっている。それは自分が一番分かっていることなのに。
「さ、3機もやられちゃって気が動転しちゃったんっス!本当すいませんっス!!」
サガラが深く頭を下げると、ハルキはため息をついた。反省の色が見えていたのでこれぐらいでいいかと思ったのだろう。
「とりあえず、今日ウォータイムが始まったらすぐに後ろに退け。体制を立て直すからな。」
サガラは素直に返事が出来ず、申し訳なさそうにハルキに言った。
「…ちょっと僕からの意見っス。僕はウォータイムが始まったらそのまま突っ走るっス」
「はぁ!?」
思った通りに簡単に頷いてもらえるわけがなかった。サガラは諦めず説得し始めた。
「アラタ君が考えたフォーメーションアタック、ガイアは武器的に参加出来ないっス。なら、少しでも敵に攻撃をしかけたいんっス。」
「だがガイアはストライダーフレームだ。銃撃に耐えられるか解らないし、ロストする可能性だって…」
ロストという言葉に反応してサガラは砕けたような笑顔を見せた。自分はロストするわけにはいかない。やらなければいけないことがあるんだ。
だが、ブルーグリフォン、彼らだけは自分個人として倒したかった。
「隊長が一番不安かもっスけど、隊長だからこそ一番僕を信じて下さいっス。」
ハルキは不安そうな顔をしたが少し微笑んで、任せたと言った。
ロストは無理でも叩きのめしてみせる、そう決めた。
警告が鳴り、ウォータイムが始まった。
直ぐ様重いハンマーを振って攻撃しようとした。が、簡単に避けられてしまった。距離を取られて、サガラはすぐブルーグリフォンを追った。
「サガラ!今のうちに離れろ!!」
こちらが距離を取れるチャンスは今しかないかもしれない。ハルキはああは言われたが、サガラの安全を考えて言った。
だが、ハルキの命令が聞こえてるはずなのに体は言うことを聞かなかった。サガラはまた、ガイアをブルーグリフォンに向かって走らせた。
まだ、まだ一撃も食らわせていない。
「サガラ!!!」
「コイツら…コイツらだけは…!」
「あ?何なんだぁ?コイツ」
ガーディの声が聞こえてサガラは耳を疑った。屋上で会った時と言い自分をわかっていないのか?
「……お、覚えてないっていうんスか…?」
「誰だよ、お前」
遠くでハルキの声が聞こえた気がしたが、はっきり聞き取ることは出来なかった。
誰、その言葉は胸に突き刺さった。
「うわぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」
「サガラ!!!!!」
瞬間、ガイアはブレイクオーバーした。後ろから銃弾を浴びせられた、カイトのDCブレイバーに。
「なっ、カイト何すんだよ!!」
「いや…助かった、あのままじゃサガラはロストするかもしれなかった」
「別に、サガラが邪魔だっただけさ」
「サガラ、大丈夫か?」
ハルキに声をかけられ我に帰った。カイトに助けられてしまった。冷静じゃなくなるとロストする可能性は十分高くなるというのに。
「は、はいっス…すいませんっス…」
誰、彼らは何も自分を覚えていなかった。自分は片時も忘れたことが無かったのに。
ガンッとコントロールポッドの内部を蹴った。
カイトとゲンドウの手助けもあり、3機が逆三角形に陣を組み、中心の者が敵を投げ飛ばしてぶつかりあった敵を2機でブルーグリフォンをロストさせた。第一小隊で考えたフォーメーションアタック、デルタクロスだ。
サガラは始めて相手がロストして嬉しく思った。やっぱり、自分の手で仕留めたかったというのもあった。
「僕、全然強くなってないじゃないっスか…」
バイザーを外したと同時にコントロールポッドが開かれた。
I want to become strong.
(僕は強くなりたい。)