六
「俺は一時、孟鐫の部隊にいた事があった。その時、堰を解放し、流れ出した濁流から黒龍が現れた。あの男は、龍を解放したんだ」
部隊にいたのならば面識があるのも頷ける。それなら何故、あの男の部隊に残らなかったのだろう。
「とにかく、洽へ行くのは決まりました。足を調達しないといけません」
馬を何処で借りるのか、または買うのかが問題だ。 懐具合からしてみれば、借りるのが打倒だが、返しに来られる保証と、命の保証は無い。 買うのが理想だが、出せる金額を考えると駄馬を掴まされそうな気がする。
「馬……か。何とかしようか?」
桓虔が唐突に切り出した。
「何処かに心当たりでもあるのですか? 出来れば、三頭の調達をお願いしたい」
「三頭……?」
首を捻る桓虔に、安葹との会話をかい摘まんで話す。するとやはり、桓虔は安葹とも面識があったようだ。
「明日の朝までには調達して来よう。安葹殿にもそう伝えておいてくれ」
言って桓虔は、剣を手にし、部屋を飛び出して行った。 見送った鮑舒は、何処から調達して来るのかと一抹の不安を感じながら、机に向かう事にした。 安葹へ出立の日時を知らせる手紙を記す為に。 [*←] | [→#]
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