村の入口だっただろう場所までやって来ると、見覚えのある黒い鎧に身を包んだ男達の成れの果てが辺りに転がっていた。
 男達は黒乕隊と呼ばれ、南方出身の傭兵部隊である。
 ただ、傭兵とは名ばかりで、好き勝手に戦い、略奪し、惨殺する。彼等が通った後には草一本残らないと、国の内外から恐れられるならず者部隊だ。
 そんな部隊の人間が、転がっている。
 誰かと戦ったのだろうが、果たしてこのような小さな村に彼等と対等、もしくはそれ以上の腕を持った人間がいるのだろうかと男は眉を顰めた。

「誰か。誰かおいでか?」

 無駄なような気がしたが、男は声を張り上げるが、南風がそれを掻き消して行く。
 男は溜息を吐き、踵を返そうと足を動かした。

「何か、用か……?」

 振り返った先の、木の下に腰掛けていた若い男が言った。
 今までその存在に気付かなかった男は、声を聞いて一瞬剣を抜きそうになるが、何とか押し止めた。

「この村の生き残りは、貴方だけなのですか? この兵達も、貴方が?」

 若い男は静かに頷く。
 見た目二十代の半ばくらいだろうか。
 細身だが、無駄な贅肉が無く、引き締まっていると言う感じだ。
 立ち上がると背丈は男と同じ程度で、乱れた長い前髪が風に翻る。

「私は鮑舒(ホウジョ)。黒乕を追う者です」

 鮑舒と名乗った男は、若い男の元へ歩み寄り、右手を差し出した。

「俺は桓虔(カンケン)……この村を治めてる男に雇われていた」

 握手を求められた若い男は、自らも名乗り、鮑舒の手を取った。

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