哀惜の掌 (3/6頁)
どうせ一人だと、滅多にない一人の時間なのだと、思いきってスウェットと下着を脱ぎ捨ててみた。
はあっ、と熱い息が布団の中にこもる。
自身に触れると、僅かに固くなり湿り気を帯びていた。
「っ、は…ぁ…っ」
ずりずりと擦ると、すぐに勃ち上がり、先端からぷくりとぬめった液体が手を濡らす。
それを掌に伸ばすようにしてまた竿を擦ると、滑りのせいで僅かにくちくちと水音がした。
狭い布団の中に音が響いて、湿っぽい匂いが充満して、思考がぐにゃりと歪んだ。
「あ…ぁあ…っぅ、ンンっ」
つま先が丸まって、ぴくぴくと、太腿が強張る。
「んっ…ン…っう―…」
おかしい、ぎりぎりまでは高まるのに、…イけない。
「な、んでっ…ぁう…!」
『…後ろだけで、イかなきゃだめだよ…』
酸欠になりそうな布団の中で、雪男の幻聴が聞こえる。
きゅっ、と。後孔が締まったのが自分で分かって、キツく目を瞑った。
『ここ擦ったら、兄さんすぐイっちゃうもんね?』
前立腺を擦りあげられる快感を思い出して、快感が背筋をぞくぞくと這い上がる。
「あ…あ…っ」
羞恥と欲望が戦っていて、ダルくなってきた左手と、一人だという開放感に、…欲望が勝った。
「…っ、ふ…ぁ…」
先走りで濡れた右手の中指を、そっと伸ばして、自分の蕾に触れてみる。
きゅ、とまるで飲み込むように動いたソコが恥ずかしくて。
それでもぬるりと指を差し込むと、予想とは全然違う、自分のナカの感覚に、思わず息を詰めた。
「あうっ…」
熱くて、ぎゅうぎゅうしてて、飲み込んでいく。
同時に、数日ぶりのその感覚に、腰まで震える。
「…ぁ……っふぁ」
また、ゆっくりと侵入させると、奥へとじわじわ指を進めて行く。
(どこ、だろ……確か、)
「っうあ!?…あ…あ…」
吃驚した。雪男がいつもしているように、その場所で指を折り曲げると、前立腺をひっかいたらしく、背筋をびりびりと快感が駆け抜け、足が痙攣した。
「は、ふっ…」
一度覚えてしまった快感に抵抗することは苦しすぎて、しばらく躊躇ったあと、また震える手でその場所に触れた。
「あ…あっ、あ、うあ…っん、んんンっ、」
横向きで右腕を挟むようにしている両股が、またピクピクと痙攣するのが伝わる。
頭の中がスパークするように真っ白になって、ぐりぐりと前立腺を押すようにすれば、閉じられないままの口端からだらだらと唾液が伝っていくのが分かった。
「ぁあっ、ゆ、き…っ、う、あぁぁあァ――!!」
全身が痙攣して、ナカに埋めた中指が、ぎゅうぎゅうに熱い内壁に締めつけられて、吃驚した。
自分の、ナカが、こんなになるなんて。
だらだらと漏れるように射精した精液で、右腕と太腿が汚れていたが、気にならなかった。
呆けたまま荒い呼吸を整えるのでいっぱいいっぱいで、射精の脱力感に浸っていると、ばさり、と覆いかぶさっていた布団が急に消えて、布団の中に籠っていた熱が一瞬で去っていった。
「だめじゃない、一人で気持ちよくなっちゃうなんて。」
ふわふわした頭で、布団が落ちて幻聴が聞こえたんだと思った。
「ゆ…き…」
薄暗い暗闇で、スカイブルーの瞳が楽しそうに細められた。
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