◎ Invader(2/2頁)
俺は俺のことをとてもよく理解している。
自分がメンクイなことも、フェミニストなことも。
面倒臭がりなことも、そこそこ冷酷な人間なことも。
それでも最低限のモラルは守っているつもりだ。
自己採点なら自分に100点あげたいくらいだ。
それに、優しさが時に残酷なことも知っている。
ふと、昼間のことを思いだした。
顔はタイプじゃなかったけれど、髪の綺麗な子だった。
『髪、ほんま綺麗やねぇ。』
そう思ったから、そう言っただけ。
触ってみたかったから、手に取っただけ。
その子の告白を遮ったのは、二度と俺なんかを好きにならんように。
俺は綺麗なものは綺麗だと、可愛いものは可愛いと、ただ愛でていたいだけ。
そう、愛でたいだけ。
困ったことに、彼は俺のタイプのど真ん中なのだ。
うとうとしながら授業を受ける、その姿を斜め後ろから見ながら思う。
柔らかな猫っ毛に、細くてしなやかな体。
女の子みたいに小さな顔と、すべすべできめ細やかな白い肌。
大きな猫目は今は伏せられているけれど、それを縁取る濃紺の長い睫毛。
つんと尖った小さい鼻。
無防備に薄く開かれた唇があまりに柔らかそうで。
「男の子やなんて残念すぎるわぁ…」
「なんかゆうたか?志摩」
「いや…、別に?」
それでも、なぜか、悪戯に触れてしまうのを止められない。
少し、ほんの少し触れるだけで、白い肌が朱く染まっていく。
頬から耳、首筋まで朱く染めて俯くその姿は愛らしすぎて。
その反応は、まるで俺に触れられることが嬉しいみたいに。
思いだして、ふふ、と 声が漏れた。
「かぁわい。」
くるくるとシャープペンシルを回しながら、ぼそりと呟いた声は、誰にも聞こえることなく空気に溶けた。
「明後日の任務、俺と奥村くんと出雲ちゃんの3人やねんてぇ」
「え…?」
一瞬、すぐに返事ができなかった。
志摩とは、最近あまり普通に喋れていない。
なぜか、心臓が落ち着かない。
「楽しみやなぁ、海!」
「…そ、そうだな…!」
予想外に、普通にへらりと笑いかけられて、思わずほっとする。
よかった。普通の会話だ。
心臓はトクトクといつもの速度で打っている。
「朝早ぇーのかな!?」「2泊3日やってー」「浮き輪持って行く?」
そうだ。なんでもない。
ちゃんと、トモダチの会話だ。
あの時、志摩の唇が触れた額が、熱い気がしたのはきっと気のせいだ。Invader
(侵略者)
こんな感じの志摩ですが大丈夫でしょうか…?
←表紙へ