七十時間 (5/6頁)
「っう、あぁぁ…ふ、」
机に伏せったまま、後ろから雪男に抱きしめられている。
いや、抱きしめられているとは少しちがう。
雪男の左手は俺の自身を握っていて、雪男の右手は、俺の、ナカに入っている。
視界の端で、俺が落とした試験管に入っていた、キラキラした虹色の液体が、床でまだ輝いているのが見えた。
「あっう、ぅああぁあぁぁア!」
まるで、熱い楔が打ち込まれるように。
「ああっ、あつ、は、あう」
「は、そうだね…僕も、熱い…」
熱に浮かされたような、雪男の声が耳のすぐ近くで聞こえる。
「よく見えるよ、兄さんと、僕が繋がってるとこ。」
ぐ、と肉を左右に引っ張られるようにして、雪男が入っている場所が引き攣る。
「ううあ、やめ、やめっ…」
視線が、まるで生きているかのように、皮膚を這う。
そのままずるずると抜き差しを繰り返えされると、羞恥が増して、逃げたくてたまらなくなる。
「あ、あ、う、っぐ」
腰骨を掴まれて、ぎっちりと奥まで差し込まれる。
内臓が押されるような苦しさに、逃げたくて。
机と雪男に挟まれて、1ミリだって逃げることはできなかったけれど。
「うあ、あ、ゆき、くるしっ…」
「すごい、おと、だね、」
「っう…あ!!」
わざと、音を立てるように掻きまわされて、歯を食いしばるとナカに居る雪男をキツく締め付けてしまい、中の、嫌な所に当たってしまう。
「っふ、ほんと兄さんは好きだね、ココ…」
「ぁあ!あ、あ、っいア!っちが、」
「違くないよ。ここ擦ったら、兄さんすぐイっちゃうから避けてたのに。」
そう言うと、雪男はソコばかりねちっこく擦りつけてくる。
「あぁ、あっ、う、っンあ…!」
額を机に擦り付けるように射精感を耐えようとしても、容赦なく穿たれるそれに頭の中が痺れてくる。
「あ、あ、も…っ!」
「兄さん、僕の名前呼んで…」
痺れた脳内に、雪男の声だけが響く。
――だめだ、だめだ、だめだ。
――ここで名前を呼んでしまったら、戻れない気がする。
しっかりと歯を食いしばって何も言ってしまわないようにしていると、雪男は速度をゆるめ、わずかに前立腺を掠めるように、ゆっくりと律動し出した。
内腿がびくびくと痙攣する。
射精感がじわじわと理性に浸食してきて、熱いのに冷や汗が出る。
「イきたいんでしょ?」
「っ、う」
また、僅かにそこを掠めながらそう言われると、理性が揺れる。
名前を、呼ぶ、だけで――
「呼んでくれたら、兄さんが好きなトコ、突いてあげる。…ね?」
ぐりゅ、と左の胸の突起を弄られて――そんな小さな刺激で、俺の中の何かが崩れた。
「っあ……ゆ、き、…っ」
「うん?」
「ゆ、ゆきっ、ゆきお…っ」
ふふ、と、小さな雪男の笑い声が耳元で聞こえた。
「っああぁあぁっ、あう!んっあ!」
「すごい声。そんなに気持ちいい?」
「っはう、ゆき、ィあ――!!!」
さっき見た、虹色の液体が、目蓋の裏でチカチカとした。
まるで、哂っているかのように。
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