の海
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「兄さん、兄さん…っにいさ、」

「あ、あ、ぃ、っあ、」

あられもない嬌声が響く中、ただ、兄さんの名前を呼びながら腰を揺さぶった。

兄さんとの結合部を覗くと、腰を引くたびに朱い内壁が捲れて自分のものに巻きついては、奥へと飲み込んでいく。

兄さんの後孔だけは僕を離すまいと絡みつく。

その唯一の感覚に、溺れるように、縋るように。
「あ、っあ、ゆき、ゆきお」

「兄さん…、…りん…」

「あ、うぅ…!」

名前を呼ぶと、まるで応えるように、熱く、きつく締め付けてくる。

「あ、あ、あっ…あああア!!」

6度目の射精をした兄さんの精液は、ほとんど透明で、さらさらとしていた。


兄さんの鳩尾のあたりには、兄さんが自分で吐き出した精液が小さな水たまりを作っていて、揺さぶるたびにとろとろと脇腹を伝ってシーツへと零れていく。

ちゅる、とその溜まった精液を吸い取ると、口に含んだまま兄さんに口づける。

「う゛う…!!!」

どろり、と口移しで流し込むと、いやいやをするように兄さんが暴れた。

「だめだよ、兄さん。飲んで…」

僅かに力を入れて下顎を固定すると、涙目で睨んできた。

「そんな目したってだめ。かわいいだけだから。」

「ん!んんん…」

強情に飲み込もうとしない兄さんに、ナカの一番敏感な前立腺を何度も何度も抉るようにして律動すると、ぼろぼろと涙をこぼして、ごくり、と、喉が動くのが見えた。

「げほっ!…けほ、う、え、」

咳き込むと同時に、ちらりと見えた舌が扇情的で、逃がすまいと吸いついた。

「ンっあ」

咥内を舌でかき回す。歯列をなぞり、舌を尖らせて上顎を這わせると、びくびくとナカが痙攣する。

ちゅぷ、と唇を離すと、銀糸が僕らを繋いで、ぷつりと切れた。

ずっと繋がっていてくれればいいのに。目に見える繋がりが欲しい。

そうして何度も何度も唾液を絡ませる。できるだけ、繋がれるように。

「んぐっ…」

真っ赤に膨れた後孔から、達していない自身を引き抜くと、兄さんの身体を起こす。

しかし左手と左足は繋がったままで、さらにその手足は感覚が麻痺しているようで、兄さんは前へ つんのめるように転げた。

「ごめんね、大丈夫?」

「な、にすんだ、ゆきお!」

震える右手で体を支えながら、兄さんは体を起こした。

左足は膝をついたものの、左手が邪魔になってそれ以上動かせない。

ペタリと座り込んだ体制になった兄さんの頬に手を添えて、残虐な言葉を言い放つ。

「にいさん、僕のも舐めて」

きょとん、と瞬きを忘れてその言葉の意味を考える兄さんが、無知の子供のようで愛おしい。

「この、口で」

そう言って添えていた手の親指を、そっと唇を割って咥内へと忍ばせた。

「えぅ…!?」

舌をくっ、と軽く押すと、奇妙な声が上がる。

漸く僕の言葉を理解したらしく、首まで赤くした兄さんが、小さく首を横に振った。

「おねがい…」

反対の手を、そっと首の後ろへと回し、引きよせるように力を入れる。同時に、下の歯に親指を引っ掛けるようにして、ゆっくりと引っ張ると、拒否するように涙を流した。

突っ張った右手は、ふるふると震えていて、なぜか、可哀そうに、と思った。



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