やきもち
任務…と言っていいのか分からないが、志摩と出雲と3人で海へやってきて、大王イカと戦いかけたりしたのが1時間ほど前。
ついこの間、ほんの1週間ほど前。
志摩に好きだと言われ、おれも好きだと返して、「ほんなら、付き合ってくれはる?」と言われ、息が詰まって声が出なかったからコクコクと頷いて。
こんなタイミングで志摩と二人部屋ってことにキンチョーしすぎて、…寝てしまったらしい。
ふと、目を覚ますと、一緒に居たはずの志摩が居なかった。
「あれ…しま?」
キョロキョロと部屋の中を見渡しても、居なかった。
時計を見ると、10時半を少しすぎたところだった。
トイレか風呂でも行ったかな、と考えて手持無沙汰にボーっとしながら志摩の帰りを待つものの、志摩はそれから30分経っても帰ってはこなかった。
ギ、ギ、と軋む階段を降りていくと、下の階から楽しそうな笑い声が聞こえた。
「いや〜今日はほんま出雲ちゃんの水着姿見れて得したわぁ〜」
「ちょっ…!あんたに見せるために着たんじゃないわよ!」
「そんなことゆうて〜出雲ちゃんてスタイルえぇんやねぇ〜」
その二人の姿は自分と志摩なんかよりよっぽどお似合いで。
そりゃあそうか。と少し自嘲気味に思う。
部屋に戻って寝てしまおう。そう思うって踵を返した瞬間、階段に足を引っ掛けて盛大な音を立てて転んでしまった。
「奥村くん!?」
「!?あんた何こけてんのよ」
二人がこけた俺を覗きこんで、その心配そうな顔にさらに胸が痛んだ。
「じゃ、邪魔してごめんな!はは!俺もう寝るから、おやすみ!」
そう言って逃げるようにダッシュで部屋に戻ると、布団にもぐりこむ。
『ほんなら、付き合ってくれはる?』
あの時の志摩の顔が、不意に浮かぶ。
ぎゅううと心臓のあたりが締め付けられるように痛んだ。
「しま…」
「どしたん、奥村くん?」
小さな呟きに、予想外に返ってきた返事に、驚いて布団から飛び出る。
「し、しま!?」
「うん?…それより、足だいじょうぶなん?思いっきり打ってたけど…」
「お、おお!そんなの全然大丈夫だ!」
「…そっか。ほな、おやすみ」
「うん……おやすみ」
もう眠くなんてなかったが、そう言ってしまった手前、布団に潜り込むしかない。
しばらくズキズキする心臓を押さえて息を殺していると、布団の向こうから志摩の鼻歌が聞こえた。
そっと布団から顔を出して覗くと、志摩は窓から月を見上げて、静かな曲を紡いでいた。
「志摩?」
「あ、ごめん、うるさかった?」
「いや……出雲は、いいのか?」
「………もしかして奥村くん…ヤキモチ妬いてくれはったん?」
「は、はぁ!?んなわけねーだろ!!」
ヤキモチ!?そんなわけない。そんな、そんなこと。
「えー…ちゃうん?そやったら嬉しいのに。つれへんなぁ。」
「う、うれしいのか?」
「そらそぉやん。俺はその布団にもヤキモチ妬いとったゆうんに。」
「な、っ…!///」
かああ、と顔が熱くなってくる。
「だって、ずっと寝てはるんやもん。奥村くんといっぱい喋りたかったのに。」
「ご、ごめん…それは、その、キンチョーしすぎて、」
しどろもどろになっていると、ぎゅう、と強い力で抱きしめられた。
「しっ、志摩!?」
「っあー…もう、あんま可愛らしいこと言わんとって…」
「!?」
一瞬、何が起こったからわからなかった。
志摩の顔が近づいて、口に柔らかくて温かいのが触れて、ちゅ、と音を立てて一瞬で離れていって、また強く抱きしめられた。
(今のって、き、きす、されたのか…っ)
触れ合っているお互いの身体からは、どちらのものか分からないくらい、ドキドキとひっきりなしに心臓の音が聞こえる。
抱きしめるなんて、女の子と、いっぱいしてそうなのに。
志摩もドキドキしてくれていることが、嬉しくてたまらなかった。
「お、俺も、さっき、志摩が出雲と話してるのみて、楽しそうだったから…こう、心臓がぎゅーってなった…」
志摩の温度が心地よくなって、ほろり、と本音が零れた。
「…寂しかった?」
「えっ…そ、そんなこと、!?」
「さみしかった、ゆうて…奥村くん。」
「っ…さ、さみしかった…」
言葉にすると、余計、あの時の感情が苦しかった気がして。
俺と居るより、出雲と喋ってたほうが楽しかったのか?なんて、聞いてしまいそうで。
「さみしかった、しま…」
そろりと志摩の背中に手を伸ばした。
「俺も、寂しかった。奥村くんの寝顔見れたんは嬉しかったけど。…お水貰いに下行ったら、出雲ちゃん居って長話してしもてん、ごめんな、奥村くん。」
「うん、」
ぴったりとくっついていた体を少し離される。
「なぁ、もっかい、キスしてええ?」
おでこをつけて、鼻が触れ合うほどの距離で、志摩が聞いてきた。
「う…あ…」
頭から湯気が出そうなくらい顔が熱くなって、何か答えなければ、と思って、考えているうちにごちゃごちゃになった頭を完全に停止させた。
そして、混乱した頭のまま、志摩の唇に自分のそれを押しつけた。
「っっっぷは、」
息苦しくなって口を離したあと、急に、物凄くはずかしくなって、俯いた。
黙ったままの志摩に不安になって、ちら、と覗き見ると、志摩は真っ赤な顔をして口を押さえていた。
「も、もしかして、俺、何か間違えてたか!?」
「もう、ひどいわ奥村くん…」
口を押さえたまま、今度は志摩が俯いてしまう。もしかしたら、今のはしてはいけないタイミングとかだったのかもしれない。
「えっ?えっ!?ご、ごめ…」
「…心臓とまってまうやんか///」
かんにんして、と。小さく呟く志摩は、なんだか可愛くて。
「…も、もっかい、する?」
そんなことを口走っていた。
「…覚悟してな、奥村くん。」
「んむッ!ン、ぁ」
キスの時に、べろを入れられるなんて思わなくて。
なんだかぞわぞわする、と考えていると、俺と、志摩以外の声が間近で聞こえた。
『りん、りん!たのしそう!おれもまぜて!』
ぴょん、と志摩の頭の上に飛び乗ったクロが、俺のひたいをぺろぺろと舐めた。
「ふはっ、ちょ、クロくすぐってぇ!」
「…さすが使い魔…主人の危険は察知したんか?」
「え?ごめん志摩、聞こえなかった!なんて?」
「さすが使い魔、ご主人さまが大好きなんやねぇ、てゆうてん。」
「おー!いつも一緒だもんな!クロ!」
『いっしょ!いつもりんといっしょ!』
「なー!」
「あかん、使い魔にまで妬けるわー!!」
*
うまく終われなかった!ので、会話でぶった切ってみた!
さみしかった、と言わせたかっただけ。
拍手SSのつもりで書き始めたものの、長!!(またか)ということでメインに置くことに…
アニメでまさかのオリジナル志摩燐!!素敵すぎる!
いつか勝燐で任務に行くのも見たい。
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