偽りの泪 (6/6頁)
「も、もう、…ッ」
そう言ってぼろぼろと涙を落とす兄さんは、とても綺麗で。
先ほどの空イキできゅうきゅうに締まったままの後孔から指を引き抜く。
「うん、もう、入れてあげる。」
「え、っああああア!!」
ズッ、と入り口が閉じてしまう前に、無理やり奥まで自分のものをねじ込んだ。
「かはっ、あぐ、う、ッ、」
息を詰めた兄さんの胎内は痛いぐらいにきつくて。
動けそうになかったので、左の胸の突起をゆるゆると舐めてみた。
「ん!ン、ふ、」
中に埋めたまま動かず、丁寧にぴちゃぴちゃと乳首を舐めていると、少し締め付けが和らいだ。
昨日中に放った自分の精液に助けられ、ずず、と腰を引くと、またびくびくと全身が痙攣する。
「あ、うぅ…っ」
怯えたような目で見上げてくるのがたまらない。
「ひあぁっ!!あ、あ、あっ、あ、ィあ」
戒めたままだった兄さんの自身を解放し、両手で腰骨を掴んで乱暴に揺さぶると、律動に合わせてあられもない嬌声が部屋に響いた。
「は、兄さんのナカ、熱くて、っ、ぎゅうぎゅうで、きもちい、っ…兄さん、は?」
「あ、あう!あ、っああ!っひ」
僕の言葉が届いていないのか、届いていても答えられないのか。
ただただ喘ぎ続ける兄さんの耳元に口を近づけ、「燐」と小さく呟いた。
「ッ!ぅあぁああ――!!!」
びしゃ、と勢いよく兄さんの自身から飛び出した白濁は、兄さんと僕の胸や腹部を汚した。そして僕も最奥に1滴残らず吐きだすと、ゆるゆると数回律動をして、奥へと精液を流し込む。
その感覚に、ぶるりと震えた兄さんに、そっと口づけを落とした。
二人分の荒い呼吸しか聞こえない部屋。
日も落ちてすらいない明るい午後。
異様な空間で、だけど僕にとっては一番満たされる空間。
それを壊したのは。
「ッぬ、け!…っゆき、お!」
涙目で、真っ赤な顔をした兄さんの、とぎれとぎれの声だった。
ずる、と自身を引き抜くと、「う、」と小さく呻いて兄さんが顔をしかめた。
「…なん、で……っ何で、こんなこと、したんだ…っ」
伏せてしまった蒼眼からは、溜まっていた涙がぽろりと頬を伝って落ちた。
「なんで…ッ…答えろよ!雪男!」
掠れた声はその叫びを余計悲痛なものに聞こえさせて。
「兄さんが好きだから。」
こんな陳腐な言葉では言い表せないけれど、一番伝わるように。
「っ…俺だってお前は大事な弟だ!だから、間違ってる!…俺らは、きょうだい、だろ!こんな、こんな…っ」
僕に組み敷かれたまま、負けじと噛みつくように叱ってくる兄さんは、やっぱり「兄さん」でしかなく。
違うんだよ兄さん。僕は、「兄弟」を越えたい。ひとつになりたいんだ。
「兄弟だからだよ……兄弟だから、近づけない。兄さんは「弟」以外の枠には僕を入れてくれない。」
「そんなの、っ」
きっと僕の言葉では、僕の心は伝えられない。
だから、ずるいと言われようとも、兄さんを騙すことも厭わない。
だから。
ぽろ、ぽろ、と。
静かに涙を落した。
その雫は、兄さんの頬にぱたぱたと音を立てて到達した。
僕の涙にぎくりとしたように言葉を止めた兄さんは、震える右手を伸ばして、僕の偽物の涙をそっと拭った。
「ゆき、なくなよ…」
「嫌いにならないで…。拒否しないで…。兄さん、…お願い」
まるで洗脳のように、何度も何度も呟いた。
「き、嫌いになんてなるわけねーだろ!だから、泣くなよ、ゆきお」
兄さんまで悲しそうな顔をして、何度も涙を拭ってくる。
そっと、慈しむように兄さんを抱きしめると、ぽんぽん、とあやすように背中をさすられた。
「大丈夫だから、ゆきお、な?嫌いになったりなんか、しねーから。」
(ばかだな…兄さん。醜い人間の泪なんか信じるなんて。)
「ぜったいだよ、兄さん」
少しだけ抱きしめる力を強め、優しい悪魔の耳元で、絶対的な約束を。
-----
長くてほんと申し訳ないです↓
まったく昼間っから君たちは!
でもねちっこい絶倫雪男様はまだまだ解放なんてしません。
だってまだ3時くらいだからね。わぉ。
←表紙へ